第4話 粒粒皆辛苦 20250326
Y、額に汗の玉がこぼれ落ちる暑さを久しぶりに思い出すような日です。
黄砂と花粉の見えない群舞の中にあって、細かな粒子を浴びることは決して健康には良くなさそうだなと予感しました。なぜって、車のフロントガラスが砂で黄色く覆われ、霞んでいたのですから。どんなものを含んでいるか一瞥ではわからず、どんな影響が出るかわからない物質を体内に取り込まずにいられるならその方を選びます。貴方は今どこで何をしているのでしょう、そしてそこに厄介な小さい粒子たちが元気よく踊っていないことを祈ります。
穏やかに三寒四温を繰り返し暑熱順化を経て夏の到来を喜ぶような、かつての歳時記を今では考えられなくなってしまいました。
貴方は気象予報士資格も所持しているとお伺いしました。地球を覆う雲や風の動きを眺め、それによって起こりうる気候の変化を貴方はどのように仕事や日常に生かしていたのでしょう。
誰も雨を想わぬような晴天の朝に、折りたたみ傘を鞄に忍ばせておくことも魔法の一つで、それは事前の丁寧な予測と知識の蓄積によって結実する類のものでしたね。今はゲリラ雷雨などという名前がついて、四季を問わず気をつけて折りたたみ傘は常備するものになりました。
地球温暖化は問題が多いことは事実ですが、人間とは環境に否が応でも順応せざるを得ず、その順応が叶わぬものは淘汰されゆく点でどの生物とも等しい生存競争を耐えています。
なのに、ひっきりなしにやってくる暑さ寒さに愚痴や文句の一つも垂らしてしまうのはいかなる事でしょう。
寒い日には温かさを欲し、暑い日には清涼を渇望する、でもずっと同じような気温の中にいると退屈…なんという我儘だろうかとこの時期は特に思います。
また書きます。どうか元気で。
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