エピローグ
おじいちゃんの葬儀は、静かに終わった。生前から人付き合いの少なかった人だから、参列者は家族だけ。質素な式だったけれど、それが一番おじいちゃんらしい気がした。
納骨を終え、落ち着いた頃、私は父さんに尋ねた。
「父さん、おばあちゃんの部屋のことだけど……」
「ああ、親父の遺品整理もしないとな。母さんの部屋も、そろそろ片づけるか」
父さんも、気にしていたらしい。
翌週の土曜、私たちはおじいちゃんの家を訪れた。静まり返った家。もう誰もいない。
「おじいちゃん、もうここにいないんだね……」
呟くと、父さんは黙って頷いた。
窓やドアに打ち付けられた板を外していく。最後に残ったのは、おばあちゃんの部屋のドアだけだった。
父さんが工具を手に取り、慎重に釘を外す。硬く閉ざされたドアの前に立ち、ゆっくりとノブを回した。
——ガランとした四畳半の部屋。そこには、何もなかった。
家具も、写真も、すべてが処分され、何もない空間が広がっている。
ただ、床の中央に、一枚の封筒だけが残されていた。
父さんが無言で封を切る。中には、几帳面な字で書かれた便箋が数枚。手紙だ。
読み進めるうちに、父さんの肩が震えた。
「親父……」
呟いた声が、涙で滲む。顔を覆い、静かに泣き出した。
「……私も、読んでいい?」
尋ねると、父さんは黙って手紙を渡してくれた。
私は震える手で、その文字を目で追った。
「こんな……おじいちゃん……!」
手紙を握りしめ、私はワンワンと泣いた。
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