お婆ちゃんの手紙

辰さんへ


この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にいないのね。


生前に伝えようと思っていたこと、私はちゃんと言えたかしら。


 ——『私の部屋には、もう入らないでね』


あれは、私が亡くなった後、思い出は貴方の心の部屋に閉じ込めて、辰さんには自由

に生きて下さいという意味でした。


貴方は難しいことが苦手だってよく言ってたよね。だから、簡単に伝えたつもりだったけど…。(言えてなかったらごめんなさいね)


これでも勘違いしてしまわないか心配です。


貴方と過ごした五十二年間は、とても幸せでした。


時には喧嘩もしたけれど、私はずっと、貴方と仲良くやれたと思っています。


貴方も、きっとそうでしょう?


身体の弱い私を、いつも気遣ってくれてありがとう。


不器用だけれど、いつも一生懸命だった貴方が、大好きでした。


私がいなくなった後は、自分の人生を歩んでください。


そして、いつか貴方がこっちへ来た時、たくさんの思い出話を聞かせてね。


今まで、ありがとう。


これまでも、これからも——貴方を愛しています。




辰さんの妻 文乃より

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

4畳半の閉ざされたセカイ 六伍六 @isFree_656

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ