第2話 ミナの訪問
夏の陽が容赦なく照りつける朝、家の軒先に蝉の声が響いていた。孤独な日々に慣れ始めた頃、不意に玄関の戸が勢いよく開く。
「お爺ちゃん~!来たよ~!」
ミナだ。
孫娘のミナ。派手な髪にミニスカート、キラキラした爪。婆さんが生きていた頃から遊びに来ては、「お婆ちゃんって不思議ちゃんだよね」と笑っていた。
俺は縁側から立ち上がる。「お前、うるせぇな」と呟くが、口元が緩むのを隠せない。
ミナが靴を脱ぎ捨て、バタバタと上がってくる。「やっと自由だよ~!」と笑いながら、俺の隣にどかっと座る。
「お爺ちゃん、元気だった? 暑いのに畑とかやってんの? マジ頑丈じゃん!」
「まあな。」
会話が苦手な俺だが、孫のために言葉を捻り出す。
「畑の茄子、まだ採れてるぞ。」
「やった~!お爺ちゃんの茄子、超美味いもんね!」
しばらく笑い声が家に満ちる。
ふと、ミナが目を細め、静かに呟いた。
「お婆ちゃん、亡くなってもう一月だよね。お爺ちゃん、大丈夫?」
俺は努めて平静を装う。
「何だ、『大丈夫?』だよ。婆さんの分まで生きてやるさ。」
だが、本音が漏れた。
「…それでも、寂しいよな。」
ミナは一瞬黙った後、眩しい笑顔を向けた。
「じゃあさ、私がたくさん遊びに来るからね!」
その笑顔が、夏の陽のように眩しくて。
俺は「うるせぇガキだ」と笑い、縁側の柱にもたれる。
四畳半の扉が視界の隅に映る。
あの部屋には入らない。
婆さんの遺言だから。
俺は今日も、生きていく。
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