第7話

「え、」


一瞬なにを言われたのか、全くわからなかった。




「うおおおお!!梶谷が言ったぞ!」


「だぁから、うるせえって」



また外野が歓声を上げ、騒ぎ出した。

対する梶谷くんは、煩わし気に顔を歪ます。


そして、ため息をつき、私を見た。



「で、どうすんの」


「え、」


「どっち」




面倒臭そうな表情の梶谷くんの顔を思わずじっと見つめる。





「付き合うって、あのどこかへ行く、」


「じゃねえやつ」


「で、ですよねー」




あたしは、あははっと愛想笑いを浮かべる。

内心は汗ダラダラ脳はフリーズ。


これってどういうことだろう。

やっぱりカレカノという、れ、恋愛的な意味でのお付き合いなんだよね。


あたしなんかでいいの!?

いやいや、でもこれは千載一遇のチャンスなんじゃ。




「で、どうすんの」


「……よ、よろ、」


「よ?」


「よろしくお願い、します……」


「……」




「まじかー!!!」



梶谷くんが何か反応する前に、また梶谷くんとつるんでいた外野の男子が騒ぎ出した。




自分の顔が火を噴くほど熱い。

思わず顔を伏せてしまって、目の前の梶谷くんを見る余裕なんてこれっぽっちもない。





「……ん。じゃ、そういうことで」


「え、あ、はい」




これで用事が終わりとでもいうように、梶谷くんは自分のグループへ戻って行って、気がつくとすでにその場を去っていた。


一人取り残されてしまったあたしは、しばらくしてようやくフリーズ状態から解放された。




「え、え、いや、え!?梶谷くんと、付き合えた、の……?」



そういうことで。

心地のいい低音が、まだ耳に残る。



あたし、梶谷くんの、彼女?



湧き上がってきた不可思議に思う気持ちと、同時に爆発する喜びに、あたしはへなへなとしゃがみこんだ。




「……まじか。……そっか、彼女、なんだ」



言葉にすると、夢のような出来事もなんだか現実に思えてきて、あたしは嬉しさを噛みしめるように目を閉じた。

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