第6話
話は昨日の放課後に遡る。
電車通学のカオちゃんと違い、徒歩の私は一人で帰り道についていた。
ふと顔を上げると、道端に何人かの男子生徒がたむろしている。
「あ、」
あの中心に立っていて一際目立つ男子は、我がアイドル、梶谷くんではないか。
一瞬で舞い上がる心を必死で落ち着かせ、まるで何事もないように横を通ろうとする。
手と足が同時に出てしまうのは見逃してほしい。
その集団の横を通り過ぎようとした時だった。
「おい」
「……」
「おい」
「……」
「おいお前、聞いてんの」
「え、は、ははははい!!私でございますか!?」
横から聞こえてくる不機嫌そうな声に思わず反応してしまい、その声の主を見た。
見上げるほどの長身。
一瞬で目を奪われるほどの整った顔。
少し無造作な黒髪が夕日に照らされて赤く色付いているのにも見惚れてしまう。
梶谷くんだ。
「……お前さ」
「え?!はい?!ど、どうでしょうか!」
心地よい低音が響き、ついピシリと気を付けの体勢で固まる。
目の前に憧れの人が立っているとどうにも緊張して言葉が不自由になる。
どうでしょうかってなに!?
噛んでる上に意味がわからない。
「ひゅー!梶谷ひゅー!!」
「うるせえ、黙ってろ」
後ろで騒ぎ出す外野を睨み、梶谷くんはこちらを向いた。
間近で見る顔は予想以上にカッコよくて、
「あー……くそ」
眉をしかめながら髪をくしゃりと握る姿がイケメンで、
「なあ、お前、付き合ってくんね」
そして、爆弾のよう一言を落とした。
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