第3話
気だるそうな声を追って横を見ると、案の定横の席に至極つまらなさそうな声の主がいた。
片耳にイヤホンをつけ、こちらを見向きもせずに手先に熱中している。
「・・・あれ、カオちゃんそれこの前クリアしたやつじゃ、って飽きないで!!」
「パーフェクト狙ってるから。いつもの妄想話に付き合ってる暇ないわ」
ズダダダダと高速で指を動かし、目の前の黒髪ボブの美人さんはゲーム機に夢中だ。
画面を覗き込めば、キャラクターが目まぐるしく技を出しては敵を倒していた。
「うっわあ、相変わらずの手さばきだねー」
「余裕」
表情も変えずに端的に喋るカオちゃん。
本名を二場 馨 (ふたば かおる)、中学以来の友人だ。
彼女は今、教室の後ろの私の席の隣でゲームをしている。
・・・もう一度言おう。教室で、ゲームをしている。
いくら朝のホームルームの前だからといって、ゲームとは如何なものかと思わないでもないが、これが私と彼女の日常風景だ。
休憩時間はひたすらゲームに費やし、隙あらばゲーム機を起動させる彼女は、言わずもがな無類のゲーム好きである。
初めの頃は先生に咎められるんじゃないかとなぜか私がヒヤヒヤしたが、カオちゃんは持ち前の頭脳と成績の良さで黙らせたみたいだった。
今や生徒のみんなもそれに慣れ、とやかく言う人もいない。
「・・・ってそうじゃなくって!!すごくない!?人生初の告白イベントだよ!?私生まれて初めてなんだよ!?」
「そう。・・・ところで、今回はどこまでがフィクション?」
「え、どこまでもノンフィクションだけど」
「え」
高速で動く指先を一瞬止め、カオちゃんがちらりとこちらを見た。
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