第七話 誤算
二人は秀國の欲しがっていた服と清正セレクトの服十数着を買った後に、薬局に寄った。
秀國は薬局の外で待つことにし、ベンチに腰を掛けて待っていた。その時、ある男が声をかけてきた。
「秀國か?」
秀國は声のする方を見た。そこには朝倉長政、秀國を清正に買収されいじめていた人物がいた。
「何か、用事でもありますか?」
秀國の脳にこびりついたトラウマがフラッシュバックし、秀國の警戒心を高めた。秀國はこの時、長政の言葉に驚愕することになるとは思いもしていなかった。
「あの時は、すまなかった。反省している。」
長政は驚いている秀國を他所に話を続けた。
「金に目がくらんだとはいえ、許されることじゃないのは百も承知だ。だが、謝りたいと思う気持ちは本物だ。」
秀國の中である一言が引っかかった。
「お金?なんでお金が出てくるの?」
秀國の表情を見て知らされていないことを察した長政は、清正にバレると秀國にも危害が及ぶと考え、その日は連絡先を交換して別れることにした。
秀國は清正が来るとその事を一旦忘れ、普段と同じように振る舞った。
シャッピングモールを楽しんだ帰宅後、数十分に渡る秀國のファッションショーが清正主催で開かれた後、夕食を食べてその日は眠った。
後日、清正は週に一回実家に帰る約束を思い出し、実家に帰ることにした。
「秀國、しっかり昼食食べるんだよ?それに、知らない人が来てもドアを開けちゃだめだからね?」
「わかってるよ。子供じゃないんだし。」
秀國は心配性な清正に呆れつつ見送った。その後、スマホで長政と連絡を取った。
『今、清正が出かけて一人です。』
『了解。なら近所の日宮公園に来てくれ。そこで色々話す。』
秀國は先日買った服を着て公園に向かった。
秀國が公園に到着して2、3分後、長政も公園に到着した。
「悪い、待たせた。」
「大丈夫ですよ。それより、早く話してください。」
清正の秘密を知りたがる秀國が長政を急かす。
「わかった。それじゃ、単刀直入に言うぞ。俺がお前をいじめていた理由は、清正に買収されたからだ。」
「えっ?」
呆然とする秀國を無視し、長政が話を続ける。
「俺の家は、親父がゴミで金が必要だった。そんな時、二年生に上がったばかりの頃だったか。清正が俺にある提案をしてきた。『秀國っていう名前の君のクラスメイトををいじめたら、毎日金を上げる。』そんなクソみたいな提案だった。だが、その時の俺はそれに乗るしかなかった。家のためにも、おふくろのためにも。」
長政の話を聞き終わった秀國は、一筋の涙を流していた。
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