第22話
再び二人きりになった廊下で、私はただ黙ってりっくんを見つめていて。
そんな沈黙の中、りっくんは私に一度も視線を合わせることなく首に手を当てて目を逸らしていた。
「りっくん……T大って……何?」
「……」
やっと口にできた私の言葉はたどたどしくて、りっくんは身動き一つしない。
「りっくん地元の大学行くってずっと言ってたよね?」
りっくんは溜息を吐いて、それから仕方なくという感じで私に視線をやっと合わせた。
りっくんがずっと気まずそうな顔をしてたのは、この話を聞かれたくなかったから?
「りっくん、T大行くの……?」
「……昨日、合格通知が来た」
固有名詞を避けた短いりっくんの言葉に、じわりと目頭が熱くなった。
りっくん、どうして……
「春からはまた三人でって言ってたじゃん……」
どうして、何も話してくれなかったの?
私一人で、春からまた三人でいれるんだってはしゃいでいたの?
私の言葉をどんな気持ちで聞いてたの?
「りっくん、どうして黙って……」
りっくんは一つ、諦めたように溜息を吐いた。
とてもめんどくさそうに。
その態度に、私はますます苦しくなる。
ねえりっくん。ずっと一緒にいたのに……
きょうだいだって、双子みたいに育ったのに……
どうして一人で……
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