第20話

「川野!」



何故か気まずい私たちの間の微妙な空気を破ったのは、りっくんの担任の先生の声だった。

私は先生が割って入ってくれた事にホッと胸を撫で下ろした。


どうしてだろう。りっくんと話すのにこんな気まずい思いしたことなんてあったっけ?


子供の頃喧嘩して、半日くらい口を利かなかった後の第一声はこんな気まずさを確かに抱えていた。

それでも、一言会話を交わし始めれば喧嘩をしたことなんて忘れてしまっていた筈だ。


そもそも今はりっくんと喧嘩中ではない。


それなのに……



チラリと見たりっくんの表情は、安堵していた私とは違い何故かとても気まずそうで、私にどこかに行ってほしそうに先生に見えないように手を振った。


私はりっくんは先生に怒られるような事をしたのかなと勘繰った。


りっくんでもそういう事あるんだ。

何をしたんだろう。


そう思えばやっと妙な緊張はほぐれてきて、笑みがこみあげた。

もう少し待って、先生との話を聞いて、後でからかってやろう。

最近からかわれっぱなしだった仕返しだ。

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