第13話 「サンダルウッドの約束」
静かな夜のオフィス。吉岡翔は机に向かい、パソコンの画面とにらめっこしていた。締め切りの迫る企画書を仕上げるため、すでに何時間も働き詰めだった。目の奥がじんじんと痛み、肩は凝り固まっている。そんなとき、ふとポケットに手を突っ込むと、小さな瓶の感触があった。
それは、彼女からもらったサンダルウッドのアロマオイルだった。
「仕事で行き詰まったら、これを嗅いでみて。少しは落ち着くかもしれないよ。」
忙しさにかまけて、しばらく会えていない彼女の言葉が脳裏に浮かぶ。ふたを開けると、深みのあるウッディな香りが鼻をくすぐった。重厚で落ち着いた香りが、緊張していた心と体をじんわりとほぐしていく。
吉岡は静かに息を吐き、背もたれに寄りかかった。「……あいつ、こんなこと言ってたな。」
いつも支えてくれていた彼女に、ここ最近はまともに連絡すらしていない。仕事を言い訳にして、彼女との時間を後回しにしていたことに気づく。
サンダルウッドの香りに包まれながら、スマホを手に取り、久しぶりにメッセージを送る。
「今度の週末、久しぶりに会えないか?」
送信ボタンを押した瞬間、肩の力が抜けた。
香りは、ただそこにあるだけでなく、時に大切なものを思い出させてくれる。吉岡はもう一度深呼吸をし、リラックスした心で企画書に向かい合った。
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