第12話 「ベルガモットの目覚め」
陽菜(ひな)は最近、朝起きるのがつらくなっていた。新しい職場に馴染めず、毎朝の出勤が憂鬱でたまらない。アラームの音が鳴るたびに布団を頭からかぶり、あと五分、あと五分と繰り返す。そんな彼女の様子を見かねた姉の茜(あかね)は、小さな瓶を手渡した。
「ベルガモットの香りのアロマオイルよ。朝、これを手首にひと吹きしてみて。」
半信半疑ながらも、翌朝、陽菜は言われたとおりにオイルを軽くなじませてみた。すると、さわやかな柑橘系の香りがふわりと広がり、まるで朝の光を浴びたような感覚がした。
「……あれ? なんか、シャキッとするかも。」
眠気に包まれていた意識が徐々に冴え、心が前向きになっていく。支度を済ませて家を出ると、いつもより軽やかな足取りで駅へと向かっていた。
職場に着くと、陽菜は自分でも驚くほどスムーズに仕事をこなしていた。上司からのちょっとしたミスの指摘も、以前なら落ち込んでしまったが、今日は「次から気をつけよう」とすんなり受け止められる。
「香り一つで、こんなに違うんだ……。」
帰宅後、陽菜は改めてベルガモットの瓶を手に取った。その明るい香りが、少しずつ彼女の心を軽くしているように思えた。
「明日も、この香りと一緒に頑張ってみよう。」
そう心に決め、彼女はベッドに入った。翌朝、アラームの音が鳴ると、陽菜は自然と布団から出ることができた。
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