第9話 香水の階層
「香水って、種類がたくさんあるけれど、どう違うの?」
百貨店の香水売り場で、紗希は戸惑っていた。初めて香水を選ぼうとしているが、どれが自分に合っているのかわからない。
「香りの濃度によって、持続時間や印象が変わるんですよ」
店員の美月が微笑みながら、一本のボトルを手に取る。
「たとえば、これは『オーデコロン』。濃度が3~5%と軽やかで、爽やかに香ります。朝のリフレッシュにぴったりですね」
彼女が試香紙に吹きかけると、すっきりとした柑橘系の香りが広がった。
「爽やかでいいですね! でも、もっと長く香るものはありますか?」
「では、『オードトワレ』はいかがでしょう。濃度は5~10%で、3〜4時間ほど持続します。日中のお出かけに向いていますよ」
紗希は手首に試してみた。ほのかに甘く、それでいて軽やか。
「いい香り……。でも、もう少し深みがほしいかも」
「それなら、『オードパルファム』がおすすめです。濃度が8~15%と高めで、6時間ほど持続します。夕方までしっかり香りを楽しめますよ」
美月が見せたボトルは、ラグジュアリーなデザインだった。
「確かに、少し大人っぽい感じがしますね」
「そして、特別な日のための香りなら『パルファム』です。濃度は15~30%と最も高く、12時間以上持続するものもあります。ほんの少しつけるだけで、長く深い余韻を楽しめますよ」
美月は小瓶のキャップを開け、そっと紗希の手首に乗せた。濃厚なローズとムスクの香りが広がる。
「すごい……まるで別世界にいるみたい」
「香水は、シーンに合わせて選ぶともっと楽しめますよ。朝はオーデコロン、日中はオードトワレ、夜はオードパルファムやパルファム……そんなふうに使い分けても素敵です」
紗希は香りの層を知るごとに、香水の奥深さに魅了されていった。
「……このオードパルファム、ください!」
初めての香水選び。選んだ香りは、これからの自分を彩るものになる。
香水は、ただの香りではなく、自分らしさを映し出すもの——紗希はそう実感しながら、ボトルを大切に抱きしめた。
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