恋②
高校初めての文化祭。放課後、俺はクラスの準備を手伝わず、友達のクラスに行って部活までの時間を潰していた。
廊下をフラフラ歩いていると、部活友達に呼び止められた。
「今日、何時からやっけ。」
「16時半から。」
「サンキュー。」
「おう。」
流石にずっとサボっているのはまずいと思い、俺は自分のクラスに戻ることにした。すると、後ろから大声でさっきの部活友達に呼ばれた。
「ちょっと戻ってきてー!女子が話したいって!」
振り返ると部活友達がちょっと派手目な女子グループに囲まれていた。文化祭期間で変なテンションだった俺はふざけた返事をした。
「女子⁈すぐ戻るー!」
すると女子グループから笑いが起きるのが聞こえた。
「あいつ、女の子好きやから。」
おい、お前、変なことを言うんじゃない。女好きキャラが定着してしまったらどうするんだ。俺は廊下を走った。
「あっ、来たで。」
部活友達がそう言うと、グループで1番派手な子が声をかけてきた。
「あっ、やっぱり。めっちゃイケメンやな!」
「あっ、あざっす。」
いきなり褒められて驚いた俺は上手く言葉が出なかった。これじゃ口下手な面白くないやつだと思われてしまうかもしれない。
「あっ、そろそろ部活なんで教室戻りますっ!おい、お前も部活行くぞ。」
そう言って俺は逃げるように教室に戻った。去り際、グループの中にいた大人しそうな子と目が合った。その子は別に俺に興味ないみたいな顔をしていて、吸い込まれてしまいそうなその目にドキッとした。
文化祭が終わり、何回か定期テストをこなすと春になり、俺は進級した。新しいクラスに入ると、文化祭準備のときのあの子がいた。大人しそうな印象は変わらないけれど、前よりも垢抜けたような気がする。
同じクラスになって気づいたのは、意外とよく笑う子だということ。そして、たまに目が合うこと。
クラス替えから数ヶ月が経ち、2回目の文化祭の時期になった。あの子は友達が実行委員だからか放課後よく残って作業していた。去年は残らなかったけれど、今年はちゃんと手伝おう。
放課後、残っている人が少なくなってきて、作業を続けているのは俺とあの子とあと数人。俺たちのクラスは演劇をすることになったからその背景を作っている。
「あっ、ペンキ混ぜるのミスった。」
聞こえてきたのは小さな独り言。普段はしっかりしているイメージだけれど、こういうところとか、あと、登校がギリギリだったりとか、意外と抜けているところがあるのもいいなと思う。
「あははっ。まあ、遠目から見たら誤差やろ。大丈夫。」
ちょっと焦ってる君を落ち着かせたくて気づいたらそう声をかけていた。ずっと話しかけられなかったのに、案外話しかける動機は単純だ。
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