学舎の祭り

夏木 咲

放課後、残れるクラスメイトたちで1週間後に迫った文化祭の準備を進める。私たちのクラスは演劇をすることになり、今はその背景を作っている途中だ。


「あっ、ペンキの色混ぜるのミスった。」


「あははっ。まあ、遠目から見たら誤差やろ。大丈夫。」


そう言って笑う君に恋に落ちました。同じクラスになって初めて知った相手を数ヶ月で好きになるなんて思わなかった。いや、最初から好きだったのかもしれない。だって私はずっと、君を目で追ってしまっていたから。




まさか君が一緒に帰ろなんて誘ってくれると思わなかった。緊張して、私の口はペラペラ動く。


「ねぇ、文化祭終わってすぐに模試とか意味わからんくない⁈せっかく文化祭の準備期間で授業ないのに!これやったら結局勉強しなあかんやん……。」


言い終えて気づいた。完全に話題選びを間違えている。いきなり愚痴なんて印象が悪すぎる。最悪だ。それでも、愚痴る私に君は笑いながら言った。


「じゃあ、俺と一緒に勉強する?」


「えっ!いいん⁈」


話題選びを間違えたおかげで思わぬ方向にことが動いた。ナイス、私のペラペラ動く口。そしてありがとう、文化祭と模試。


「いいで。朝早めに登校してやるか?」


「朝かー。私、朝苦手なんよな。」


「いっつもギリギリに登校してくるもんな。」


「いや、自分もやん!」


「いや、俺は朝家で勉強してから来てるから。別に早く登校するんは余裕やで。」


「まじかー。」


あれ、割と会話が続いている。君がラフに話してくれるおかげで私の緊張も少し解けてきた。


「いや、でも頑張るわ!来年受験生やしそろそろ頑張らなやばいもんな。」


来年受験生なんてのは建前で、本当は君とできかけた接点をなくしたくないから。


「よし、その調子や!じゃあ、明日からやろか。」


「うん!たぶんめっちゃ質問することになるから、よろしくお願いします。」


そう言って私は頭を下げた。


「まかせて!たぶん教えられると思う!」


「頭いいもんな。頼りにさせてもらいます!」


そう言って見上げた君の顔は赤かった。ねぇ、赤いのは夕焼けが反射してるから?それとも……。そういえば、君の友達から聞いたよ。君、去年は放課後、全然手伝わなかったって。

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