そこわかれ-7

 門を出ると夜風が吹いていた。

 初夏のどこか湿っぽい空気で。

 不思議だ。

 あの場所はあんなにひからびていて、空気までもが乾燥していたのに。


「……あのさあ。刻人さん。あの女の人」


 そう言っているのに刻人はすたすたと何も言わずに自分の前を歩いていく。

 口も聞いてくれない。

 話していても聞いてないフリ。

 自分は何か悪いことをしたんだ。

 それなのに、怒ってもくれないんだ。

 唇を噛み締めて。

 それから那智は言った。


「刻人さんの馬鹿野郎!」


 ピクリと長身の背が跳ねて、錆び付いた人形のような所作で刻人が振り返る。


「お前声がでかい……」

「俺なんかした?なんかしたなら言ってよ!ぐるぐるぐるぐるって俺だけばっかみたい」


 両手を握りしめて那智がそう言うと、刻人はぽんと那智の肩を叩いた。


「落ち着け。何をそんなに苛立ってるんだ」

「だって」


 那智は唇を噛み締める。


「もういい」


 刻人に背を向けて走り去る。

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