そこわかれ-5

 刻人から語られた話を要約するとこのようだった。

 ここは元は刻人が連れてきた女性の、先祖の持ち物だった。しかし、祖母の代にこの家からは人が離れて手入れもおざなりになっていた。

 そんなときに怪しい噂が始まった。

 人が井戸に滑落する事故のような現象が相次いだのだ。

 奇妙だったのは、落ちるのは男性のみで落ちた者は口を揃えてこう言うのだ。

 若い女に連れてこられて、頭がふらついて気づいたら落ちていたと。

 事故の「ような」、とはそういう意味である。

 運良く安全に保護されたものもいたが、中には……。


「覗いてみろ。……見たくないなら、見なくていいが」


 そう言われると見たくなってしまうのが人の性である。

 井戸を、覗いてみる。

 よく見えないので携帯電話を取り出して、懐中電灯の要領で底に光を向けた。

 井戸の底には泥に絡みつかれるように白骨化したいくつかの人であったものが見えた。

 くろぐろとした情念が渦巻いているように思えて、那智は本能的に目をそらす。


「……女性のほうはもう泥のような思念になってしまったんだな。それが何年も何年も経つうちに凝り固まって人を呼ぶようになった」


 そうひとりごとのように呟いた刻人の声が、風にのって消えた。


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