第2話
「Rairaさんメジャーデビューおめでとうございます!」
「ありがと。」
何度も言われたその言葉。結穂がいなければなんの意味もない。
けれど、僕には連れ戻せない。連れ戻せたとて結穂の傷をえぐるだけだし。僕は得でも、結穂はどうだろうか。分からないや。
ピアニストの席は空いていた。あの後何人もとタッグを組んだが、どうも結穂以上の者はいなかった
私を呼ぶ声がして振り返る
けど誰も居なくて
愛しい君も
親しいあの子も
ここにはいない
幻聴だったか
と歩みを再開する
今日も好調だ。別れが孤独が私を創る。結穂との別れが、歌になり飛んでいく。
本当にこれで良いのか。結穂は生きているんだから。何よりまた二人で音を奏でたかった。
「来蘭。」
「何?」
「結穂さんはもういいんですか。」
「良くはないよ。けれど、これ以上傷つける訳にはいかないでしょ。」
「結穂さんと向き合ってみたらどう?一回、環さん抜きで結穂さんを見てさ。」
「そんなこと出来たら苦労しないよ。鈴音あんたも分かるでしょ。環と結穂は似てる。他人の空似だけどさ。」
鈴音は環と僕の幼なじみ。結穂と活動してる頃からのファン兼マネージャーで結穂のことも良く知ってる。
「来蘭。向き合おうとしたことある?一度もないよね。私は結穂の居場所、知ってるしいつでも会える。結穂さんさえ良ければ来蘭だって会えるんだよ?」
「そうだけど……。」
「なに尻込みしてんのさ。休みは取るから会いに行くよ。」
拒否権はないようだ。
会ったところで何を言えば良いのか。なんて声をかければ良いのか。
ーーー私には分からない。
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