中編

 マサトが成人向け雑誌を学校に持ってきてから約1ヶ月が経った頃だっただろうか。

 僕もみんなもあの1件なんか忘れていたとき――ある事件が起きた。


「ん? なんだこれ」


 発端は休み時間中にヒロキの机の中から、謎の紙切れが出てきたことだった。

 紙切れを広げると、そこには男女が激しく愛し合っているシーンが描かれていた。


「それヒロキの?」


「これは僕の趣味じゃないなぁ」


「いや別に性癖の話をしたいわけじゃないんだけど」


 とここまで、話しているとき僕はこの展開に既視感を覚えた。

 以前にもこんなことがあったような――。


「あっ!」


 と、ここで僕は完全に思い出した。

 そう、1ヶ月前にマサトが学校に雑誌を持ち込んだときだ。


「これってマサトの――」


「あーーーーーかも」


 マサトの席に視線を向けるが、マサトはいなかった。

 おそらく、先生にでも呼び出されているのだろう。


 しかし、何故このようなのがヒロキの机の中に入っていたのだろうか。

 誰が何のためにこんなことを。


 僕が考え込んでいると、突然ヒロキは立ち上がり疾走し始めた。


「みんなあああああああ!こんなのあったよぉぉおおおおお!」


 いや、前回もあったなこんなこと。


 ヒロキは前回同様、クラスにいる男子に切れ端を見せびらかし始めた。

 男子たちも興味津々で、それを見て「ウェーイ」などと冷やかし合っていた。


 だが、やはり飽きたのか切れ端を丸めてボールにしてそれでキャッチボールを始めた。


 …………いや、だからなんで?


 キャッチボールがしばらく続いた後、ボールのコントロールが外れ、廊下に出てしまった。

 投げたクラスメイトは慌てて取りに行こうとしたが、回収することは叶わなかった。


 何故ならボールが廊下に放り投げられたタイミングで、たまたま担任の教師が通りかかったからだ。


 担任は紙切れを拾い、それを広げると険しい表情をした。

 そして、紙切れをポケットにしまいこみ何もなかったかのように歩き出した。


「これやばくね?」


 ある生徒が言ったのを皮切りに、男子たちの間に不安が伝播し始めた。


 僕はヒロキに話しかける。


「どうすんのこれ?」


「うーん、ちょっとマズイかもなぁ」


 ヒロキは悩ましげな表情で答えた。

 その後、担任の授業があったのだが特に紙切れについて言及されることはなかった。


 僕達は問題にならなかったのだろうと胸を撫で下ろしたが、ここからが真の修羅場になるなんて思いもしなかった。







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