最終章 アンニュイなオレのレゾンデートル 2
とりあえず少しでも奴に近付こうとした矢先。
近くで悲痛なモンスターの鳴き声が聞こえた。
声が聞こえた方を見ると、地面に倒れた一角獣ユニコーンが、今まさに合成モンスターに殴り殺されそうになってるところだった。
「ちっ!! 間に合えっ!!」
助けるか助けないか迷う暇もなく、ほとんど無意識の状態で、オレは持っていた槍を合成モンスターに投げつける。
「・・・???」
多少距離はあったものの、槍は目測通り合成モンスターに突き刺さった。
・・・が、傷みも何も感じてねえ様子でオレの方を向く。
「これで殺せるなんざこっちも思ってねえよ。おいあんた! 今のうちにさっさと逃げろ!」
少しでもユニコーンが逃げやすいように、派手に腕を振り回して合成モンスターの注意をこちらに向けながら、倒れたままのユニコーンに声をかけるオレだったが、
「ヒヒーンッ! ヒヒーンッ!!」
「ちっ! 何言ってんのかわかんねえよ!」
何を言ってんのかわかんねえが、そいつの足を見ると、合成モンスターにやられたのか、足が潰されちまっていた。
「這ってでも良いから逃げろ!!」
自分で言っときながら、ユニコーンに這えってのは無茶過ぎるか、なんて思ってると。
「フゴーーッ!!!」
「!?」
土煙を上げて突進して来た何かに突撃され、合成モンスターは軽く数十メートル吹っ飛ばされてった。
「フゴゴッ!! フゴゴッ!!!」
吹っ飛ばしたのは、牙を生やした巨大な猪ウリボウス。
どうやら同じ召喚術者の仲間であるユニコーンを助けに来たようだ。
「ヒヒーンッ!!」
「・・・フゴッ!!」
「ヒヒーンッ!? ヒヒーンッ!!」
何か会話をすると、ウリボウスは悲痛に叫ぶユニコーンを残して、さっさと自分だけ逃げてっちまった。
多分、ユニコーンの足が潰されてたことを知って、こりゃダメだとさっさと見切りをつけたんだろう。
まあ別に珍しくもない。
ユニコーンみたいな種族が足をやられるってのは、もう死んだようなもんだ。
いくら同じヤツの召喚奴隷同士とはいえ、足手まといな奴を助けるなんてことはほぼあり得ない。
それが普通であり当然の行動だ。
特にこんな負け戦なら尚更。
・・・ただ、あいつらなら、こんな状況でも、仲間を見捨てることはしなかっただろうけどな。
「・・・今オレに出来るのはこれくらいだ」
「ヒ、ヒヒーン・・・?」
オレは仲間に見捨てられ、絶望で呆然としてるユニコーンに近付くと、その体を抱え、テントが崩れて出来た物陰に運んだ。
「生きてりゃそのうちお前と契約した奴が帰還させてくれるか、もしくはどっか安全な場所に召喚してくれるさ。それまではここで奴らに見つからねえように隠れてな。じゃあな」
「ヒ、ヒヒーンッ!」
立ち去ろうとすると、心細くてオレにこのままここにいろと言ってるのか、ユニコーンは目をウルウルさせて何かを訴えてくるが・・・。
「悪いが、オレにはやらなきゃならねえことがあるんだ。成功すりゃ、お前だけじゃなく、ここにいる奴ら全員助かるんだ」
言葉が通じてないのはわかってるが、オレはそう言ってユニコーンの頭を軽く撫でた。
「・・・オレ、これが終わったら、何処か安全な場所で幸せに暮らすんだ」
「ヒヒーンッ!?」
オレの言葉はわからないはずだが、おそらく「言っちゃいけない言葉」を言ったように感じたんだろう。
そんな驚いてる様子のユニコーンを隠すように、テントの布を無造作に被せた。
「さてっと」
なんちゃらフラグは冗談として、合成モンスターが吹っ飛ばされた際に落ちた槍を拾い上げながら・・・ユニコーンを助けたことをちょっと後悔してた。
戦場に近づく時に、合成モンスターが何処にいるか確認しながら来たんだが、ユニコーンを助けてるうちにわからんくなってしまった。
そのせいで当初予定してた、合成モンスターの場所を確認しながら、見つからないように奴に近付くってのが難しくなっちまった。
「けどまあ、こうなっちまった以上しゃあねえ!! こうなりゃ覚悟を決めて一気に突っ込むぜ!!」
槍を構え、合成モンスターと、合成モンスターから逃げ惑う連中の中を、奴を目指してオレだけが逆走して突っ走る。
途中何度か合成モンスターと鉢合わせ攻撃を受けたが、殺しきれなかったからといって、オレを執拗に狙って来たりはしなかった。
奴からどんな命令を受けて動いてるのかは知らねえが、たぶん無差別に全員殺せとか言われてるせいで、次々にターゲットを変えてるせいだろう。
そのお陰で合成モンスターにやられずに進めてるが、とはいえ、大型にだけは気をつける必要がある。
さすがにアレの攻撃を一発でも食らったらアウトだから、大型にだけは見つからないように、
「ってマジかーッ!?」
こいつにだけは近付かないようにって思った矢先。
テントの影から出て来た大型の合成モンスターが、オレを殺そうと巨大な腕を振り下ろしたのだった。
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