最終章 アンニュイなオレのレゾンデートル 1
遠くから、悲鳴や叫び、怒号と衝撃音が聞こえて来る。
慣れ親しみたくもねえ戦場の音だ。
急いで近くの小高い丘に上がると、その戦場を見渡すことが出来た。
そこは平淡な野原で、簡素なテントがいくつも建てられた拠点。
遠くにニンゲンの街が見えるから、ここに集まった連中は、おそらくあそこを攻める予定だったんだろう。
だが・・・。
「なんなんだコイツらうわああ!!!」
「そ、そんな!? 俺のモンスターが太刀打ち出来ないなんて!!」
「助けてくれーーーッ!!!」
そこではオレの右腕、そして仲間が殺された時と同じ、合成モンスターによる一方的な虐殺が繰り広げられてた。
「・・・クソが・・・」
オレがいる場所からは奴の姿は見えねえが、ここの何処かに必ずいるはずだ。
「・・・それにしても、こうして離れて見ることで、以前よりもずっと詳しく状況を知ることが出来るな」
合成モンスターの数は10m越えのでけえ大型が1体。
5~6mくらいの中型が4体。
2~3mくらいの、小型って言うほど小さくはねえが、この中では小型が5体の、全部で10体。
その全てが見たこともねえ異質な姿で、明らかに色んなモンスターが混ざってると分かるのもいれば、何か灰色でブヨブヨとしてるのもいる。
合成された奴らのことを考えると、あんましこんな風に言いたくねえが、その姿は・・・ぶっちゃけ不気味の一言に尽きる。
あと合成モンスターはどうか知らねえが、普通はモンスターと召喚契約出来る数は召喚術者の能力に依存するらしい。
つまり普通に考えると、これだけの合成モンスターを同時に従えてるってことは、ムカツクが奴は相当な実力の召喚術者ってこった。
そして、そんな10体が戦場を所狭しと暴れ狂ってる。
そりゃもう、文字通りに。
「・・・こんなこと言いたかねえが、化け物だな・・・」
戦場にはオレよりも強えサイクロプスやゴーレム、ヘルハウンドなんかもいるし、数のうえでは圧倒的に拠点側が有利なのに、小型と中型の合成モンスターはまだしも、大型からはどんなモンスターも逃げるのがやっとだ。
「・・・さて、奴は何処だ・・・」
はっきり言って、合成モンスターの相手なんぞはやってられねえ。
オレが狙うのは、あくまで奴ただ1匹。
それがオレに出来る、奴を殺れる唯一の方法だ。
「ちっ。ここからじゃ奴の居場所がわからねえか。折角良いチャンスだってのに」
今回は前みてえに、注意を逸らしてくれる仲間がいねえ。
他の連中には悪いが、この戦場の混乱を上手く利用しねえと。
「・・・クソっ。あいつは何処だ・・・」
虐殺が終わって、戦場が落ち着いちまう前に見つけねえといけねえのに、テントの中とか物陰とか、目を皿のようにして戦場を見渡すが、居場所が全くわからん。
早くしねえと戦いが終わっちまう。
「・・・もうちょい近づくしかねえか」
出来れば木の裏とか川の中とか、何処かに隠れながら近づきたいところだが、こう平淡な野原だと、身を隠す場所がほとんどねえ。
合成モンスターの場所だけはしっかり確認して、そいつらに近づかないようにするしかない。
そうしてオレは、出来るだけで合成モンスターに見付からねえように、身を縮め、注意しながら戦場に近付いて行く。
「・・・しっかし、合成モンスターってのは、見れば見るほど異様で異質な姿で、尋常じゃねえ強さだな・・・」
大型の合成モンスターなんて、生物界最強のドラゴンでも勝てねえんじゃねえかと思うくらいだ。
それを自分の自由に使えるとなれば、ニンゲンからすりゃ喉から手が出るくらいのシロモノなんだろうな。
・・・まあ、ミシェリアと、ミシェリアの親父はそうじゃなかったみてえだけどよ。
「!!!」
見つけた!! 奴だ!!。
今オレがいる場所からは遠いが間違いねえ。
虐殺を続けてる合成モンスターに注意しながら、戦場に近付いていたオレは、激しい戦場になってる場所から少し離れた場所で、護衛っぽい合成モンスターに囲まれ、余裕の表情で座って戦場を見てる奴の姿を見つけた。
しかも、その隣にはミシェリアもいやがった。
「あのメス、生きてやがったのか・・・」
ミシェリアが生きてて、嬉しいのかどうでもいいのか、自分でもよくわからん複雑な感じだ。
つか生きてたってことは、オレとの召喚契約がなくなったのは、やっぱりミシェリアが破棄したからか。
レオンの話を聞く限り、ミシェリアは今でも奴を殺す気マンマンだろうに、何でわざわざ召喚契約を破棄したんだ?。
どうせオレじゃ奴を殺せねえから、契約しても無駄だとでも思ったんかね。
・・・いや別に、ミシェリアの召喚奴隷になりたいわけじゃねえし、解放されて清々してるんだが・・・。
「・・・ま、どうでもいいさ」
そう。契約を破棄した理由なんぞどうでも良い。
そんなことより、オレの目的はあくまで奴を殺すこと。
んで、今考えなきゃならんのは、ミシェリアのことなんかじゃなく、奴を護衛する合成モンスターのことだ。
左右に小型が2体だけだが、オレじゃ小型の1体すら倒せねえ。
ん? さっきは合成モンスターは全部で10体だと思ったが、こうなると12体ってことか。
まあいいさ。とにかく奴をぶっ殺す為には、奴らに気付かれねえように近付く必要があることに変わりはねえ。
「さて、どうす――」
「ヒヒーンッ!!!」
「!?」
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