最終章 アンニュイなオレのレゾンデートル 3
「そろそろ終わりのようですが、やはり僕が作った合成モンスターは強いですねぇ。姿形は醜い姿ですが、戦力的には申し分ない。あまりにも戦局が一方的過ぎて、逆に見ててつまらないくらいですね」
男は自分が作り出した合成モンスターが、戦場で他のモンスターを蹴散らすのを見て、満足げな笑みを浮かべながら気分良さそうに語っている。
「・・・・・・・・・」
馬車から降ろされたミシェリアは、簡易椅子に座らされて縛られ、緊張した面持ちで身を固くしながら、男の話をただ黙って聞いていた。
「特にあの大型の合成モンスターは圧倒的な強さでしょう? あの大型には、ドラゴン種の中でも強力なティアマトを素体として使ってましてね。捉える時も殺さずに生け捕りにしなければいけないせいもあって、合成モンスターが何体もやられてしまって苦労したんですが、合成する時もまた苦労しましてねぇ」
男はミシェリアに聞かせるというより、自分の言葉で悦に入っている様子だ。
「ドラゴンは戦闘力だけでなく生命力も強く、そのせいで色々とイレギュラーが起きてしまい、本来あった飛行能力も合成する際に失われてしまいました。それでも非常に強力な合成モンスターが出来上がったのですが、そこが唯一後悔してるところです」
「・・・・・・・・・」
「それにしても、どうやらここでも良い素材は見つかりそうにないですねぇ。全くもってつまらないです」
「・・・・・・・・・」
「・・・ふむ。先ほどから随分と緊張されてるようですが、そんなにこいつらに囲まれてるのが怖いですか?」
「!?。ふ、ふざけんなそんなわけねえだろ!!」
強がってみたものの、椅子に座らされ縛られたミシェリアの左右には、2人を護衛する合成モンスターがいる。
いくら護衛の為とはいえ、不気味で何を考えてるかわからない合成モンスターに囲まれてるのは恐怖でしかないのだが、それを認めるのはミシェリアのプライドが許さなかった。
「ははは。大丈夫ですよ。こいつらは僕の命令に絶対服従ですから。それにこいつらは僕らを守ってるんですからね」
「・・・もしこいつらに意思があったら、真っ先にてめえは殺されてるだろうがな」
「ははは。相変わらず面白いことを考えますね。こいつらは僕の命令を聞くだけのただの道具ですよ? 意思どころか、何かを考えることすらしません」
「・・・・・・・・・」
「しかし、いつもなら僕1人で戦いを見ているんですが、やはり誰かと一緒と言うのはいいですねぇ。これからは、この時間も色々と楽しめそうですよ・・・ふふふ・・・」
男は下卑た笑みを浮かべながら、その手でミシェリアの顔を撫でる。
ミシェリアは嫌悪感を丸出しにして顔を背けるも、体は椅子に縛られていて、男の手をはねのけることも、男の手から逃げること出来ない。
「ここでの戦いが終われば僕の仕事も一段落です。しばらく仕事は休みにしますので、たっぷりミシェルお嬢さんを可愛がってあげま――」
「ギギャギャギャーーーッ!!!」
護衛の合成モンスターが不気味な叫び声を上げた瞬間。
男の背後から槍が飛んで来ると、男の数十cm横を通過し、前方を見張っていた合成モンスターに突き刺さった。
「な、なんだ!?」
慌てて後ろを振り返った男が見たのは、全身ボロボロで荒い息をはき、槍を投げた格好のままのリザードマンの姿だった。
・・・数分前・・・
オレの運の無さのせいで、大型合成モンスターに不意に出くわし、巨大でぶよっとした腕でぶん殴られる直前。
大型合成モンスターと同等の大きな何かが突進して来ると、そのまま大型合成モンスターに直撃。
ウリボウスの時のように吹っ飛ばすほどじゃなかったが、オレをぶん殴ろうとしてた腕を止めるには十分だった。
「!!!」
何が起きたかわからねえが、危機一髪助かった幸運に感謝してすぐに大型から離れる。
そして狙ったのか偶然かはわからねえが、どちらにしろ助かったオレは、助けてくれた相手を見て・・・驚きを隠せなかった。
「ド、ドラゴン!? この戦場にはドラゴンもいたのか!」
大型合成モンスターと対峙していたのは、前に別の戦場で見た緑色の鱗のドラゴン。
とは言え、あの時のドラゴンがいるとは思えねえから、違うドラゴンだろうが――、
「あの時の借りを返せたようだな」
「な、何で言葉が!? まさかお前、あの時のドラゴンか!?」
アホな召喚術者に使役されたドラゴンを助けたのは、こことは全く別の場所だ。
それが、何でここに・・・?。
「今は醜き姿なれど、こやつは我の古き友。以前、助けようとして逆に囚われてしまったが、お前に助けられてからも、こやつを解放してやらんと探していた。お前がいたのは驚きだったがな」
「驚いたのはお互い様だ。それに、オレがここにいたのは大した理由じゃない。あんたの友達をこんな姿にした奴を、殺さねえといけなくなってな」
「ほう?」
大型と対峙しながらドラゴンと話してると、戦場の外から、結構な人数の連中が乱入して来た。
「な、なんだあいつら? どっから沸いて出て来た?」
「友を助ける際に、余計な者どもを引き付ける囮に丁度良いと考え、あえてニンゲンに見つかりながらここに来た」
「ってことは、あれはあんたを追って来たってことか。利用されるとも知らずに」
「うむ」
「はっ! 大したもんだ!」
ドラゴンが何処から来たのか知らないが、ドラゴンを倒そうと、あるいは召喚奴隷にしようと追いかけて来たニンゲンどもが、合成モンスターに見つかって泡食って戦い始めてた。
こりゃ好都合だぜ。
「我は古き友を助ける。お前はお前のすべきことをするが良い」
「あ~。言いづらいんだが、お前の友達は、もう・・・」
「わかっている。生きて助けるのは不可能だ。だが、このままにはしておけん。友もそれを望んでいるだろう」
「そうか・・・」
それがわかってんなら、これ以上、オレが言えることは何もねえな。
「それじゃ、ここは任せたぜ。生きてたらまた会おうぜ」
「成功を祈る」
「ありがとよ。あんたも無茶して死ぬなよ」
そして、戦場の混乱を利用しながら、仲間の仇に迫ったオレだったが・・・。
「たった1匹でここまで来て僕を狙ったのか!? たかがリザードマンの分際で!」
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