第三章 アンニュイなオレと仲間たちの激闘 2
「助かった。俺たちも劣勢になってるのはわかってたんだが、これからどうすりゃいいのかわからなくなってたんだ」
「仲間がみんな死んで、オレもこのまま死んじまうと思ってたぜ」
「まさか助けが来るとは思わなかった」
「べ、別に苦戦なんてしてなかったんだからね!!」
孤立していた味方を助けながら後退していると、いつの間にか味方が結構増えてた。
つっても、それぞれ違う種族で、ミシェリアの召喚奴隷ってわけでもないから言葉が通じないんだが、まあそこは身振り手振りや雰囲気なんかで、お互いに何を言いたいか察する努力をしあう。
生き残りたいのはみんな同じだからな。
ただ状況はよくなってないし、戦闘も一向に楽にはならない。
むしろ味方が集まれば、当然敵も集中する。
かと言ってバラバラに動けば各個撃破される。
しかも敵の召喚奴隷はミシェリアを執拗に狙ってくる(召喚術者が死ねば、その召喚奴隷とは戦う理由がなくなる。オレも召喚術者が近くにいれば優先的に狙う)から、オレたちは自分の身だけじゃなくて、ミシェリアも守らなきゃならない。
・・・まあ、ぶっちゃけミシェリアが死んでくれた方が・・・なんだが、そんな動きをしてるのがバレたら強制執行間違いなし。
それに、どうあってもレオンはミシェリアを守るだろうから、結果的にレオンも危険にさせちまう。
だから結局はミシェリアも守らなきゃならず、そんな中で、必死に後退していたオレたちだったんだが・・・。
やがて、とうとう退路も断たれ、敵に完全に囲まれちまった。
「・・・どうするよ・・・」
「これは・・・参ったのぅ。どうやらいつもとは様子が違うようじゃ」
さすがのレオンも、この状況に頭を抱えてる。
実際に頭を抱えてるわけじゃないが、そんな雰囲気ってことだ。
んで、オレはすでに頭を抱えてるどころか、お手上げ状態。
ちなみにレオンの言った「いつもとは違う」ってのは、後退や撤退、もしくは相手が戦意を失ってる場合は追撃しないっていう、召喚奴隷同士の暗黙の了解があるのに、って意味だ。
召喚奴隷は召喚術者の命令で敵味方に分かれて戦ってるだけで、本来はお互いに憎み合ってるわけでもねえし、戦う理由もない。
だから相手が引けば追い詰めて殺す必要はないし、そんなことをしたいと思ってる奴なんて・・・まあ、中にはいるが、滅多にいない。
もちろん生死をかけて戦ってるわけだから、殺すことも殺されることも覚悟のうえだが、殺すか殺さないかを選べる状況であれば、殺さないようにするのが大半だ。
ところが最近はその暗黙の了解に気付いてて、そうならないように監視するようなニンゲンがいる。
んで、今回がそうだ。
もしそのニンゲンがいなければ、こうも執拗に追撃されることもなかっただろうに・・・マジでニンゲンってのはイヤなもんだぜ。
「・・・ミシェリアを囮にして、オレサマたちだけで逃げるってのはどうだ?」
「そんなことしたら、それこそ強制契約執行でオレたちが囮にされるぞ」
「・・・だよな」
そうこうしてるうちにも、包囲網はどんどんと狭まってくる。
たぶん、一度状況が動いたら、敵が雪崩れみたいに襲い掛かってくるはずだ。
「クソッ、あたしはこんなところで死ぬのか・・・あたしにはやらなきゃならねえことがあるのに・・・」
さすがのミシェリアも、この絶体絶命の状況に諦めかけてるっぽいな・・・。
「・・・フォーテルちゃん。今度こそ、もうダメにゃ?」
なんとか生き残る道はないものかと、ニャン吉は再度、うちの天才軍師に教えを乞う。
ついでにオレも、ニャン吉と全く同じ思いで天才軍師様を見る。
「・・・包囲してる敵を全て倒せるだけの戦力があればいいが、現状不可能だ」
「それは、もう全滅するしかないってことか?」
「いや、全てを倒しきれないなら、一点突破で包囲を突き破ることが出来れば、あるいは・・・」
「しかし、それも易々と出来そうにはないのう。せめて、少しの間だけでも背後を足止め出来ればよいのじゃが」
「ならその役目。僕たちが引き受けるよ」
「は? うおっ!?」
そう言って出て来たのは、レオンよりデカい四足で、こいつは・・・確か恐竜種とか言ったっけか。
サイみたいに太い角も生えていかにも強そうなんだが、そいつの背中にもう1体。
体は丸っこくて小っこく、2腕2足で長い頭、大きな垂れ下がった耳の、今まで見たことのない、いかにも弱そうな奴が乗ってた。
オレにゃ見分けはつかねえが、召喚術者であるミシェリアには、どいつが味方でどいつが敵なのか見分けられるらしい。
んで、オレたちはそんなミシェリアの指示で、とりあえず助けられる奴は全部助けて来たから、いつの間にこんな奴も助けてたのかと思って、今更ながら驚いちまった。
「っていうか、なんでそっちの言葉がわかんだ? ミシェリアと契約したのか?」
「僕は精神感応力が使えるんだ。テレパシーって言えばわかるかな? 発生の仕方は違うけど、異種族である召喚術者の言葉を理解出来るのは、これの応用なんだよ?」
どうやらちっこい方が話してるらしいが・・・なるほど。わからん。
けどまあ、今は言語が通じることがわかれば十分か。
「足止めを引き受けると言ったが、何か良い案があるのか?」
フォーテルも俺と同じ結論に至ったらしく、とにかく話を進めることにしたようだ。
「僕たちは、もうあんな召喚術者に使われるのは疲れきってたんだ。だからここで死ぬんなら、それもいいと思ってた。それなら無駄に死ぬより、同じ召喚奴隷を守って死んだ方がずっと良いと思ってね」
「ちょっと待て。それは足止めに良い案があるわけじゃなく、体を、命を張って足止めするってことか?」
「他に良い方法があるんなら良いけど、今は他にないと思うからね」
・・・誰かが足止めしなければ全滅する。
けど、足止め役にこいつらを置いていけば、確実にこいつらは死ぬ。
それは全員わかってた。
だから「そんなことしなくていい」とか「自分も残る」なんてことは、誰も言えなかった。
・・・そして、オレは・・・。
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