第三章 アンニュイなオレと仲間たちの激闘 1
「いくら何でも敵多すぎじゃね!?」
敵味方入り混じった戦場の中。
猛烈な勢いで突っ込んで来た人狼「ウェアウルフ」をカウンターで返り討ちにしてやるが、周りにはまだまだ敵のモンスターがいやがる。
ミノが仲間になってから大体3ヶ月。
無茶なミシェリアの命令で何度も死にそうになりながらも、順調に戦功を重ねて来たオレたちだったが・・・今回はかなりヤベェ。
「まだこれだけの戦力を投入できるとは、ミノ後ろだ!!」
「ウモオオオッ!!!」
いつの間にかミノの背後に迫っていたデカいカマキリ「キラーマンティス」を間一髪、大斧を振り回して何とか倒すが・・・。
「大丈夫か!?」
「見りゃわかんだろ大丈夫じゃねえ! 倒しても倒しても切りがねえ! もうダメだろオレサマたち!」
「え~っ!? そんなのイヤにゃ~っ!!」
仲間も必死に戦い何とか生き残ってるが、みんなオレと同じく厳しい表情。
今回オレたちが召喚された場所は、とあるニンゲンの街。
ここは少し前の戦いでオレたちが奪い取った街だが、さして時を置かずに奪い返しに来やがった。
ただ敵側は劣勢って話だったし、もう大規模な攻めはないもんだと思ってたんだが、まさかここまで押されることになるとは・・・。
当初は街の手前で防衛線を張り、敵を街の中に入れる前に撃退する予定だった。
それが今や、予想外の敵の数と勢いに押され、すっかり主戦場は街の中。
オレはもう逃げた方が良いと思うんだが、傭兵には援軍が来るまで死守しろって命令が出てるらしく、オレたちはミシェリアの命令で、今も仕方なく必死こいて戦ってる。
・・・だが、ぶっちゃけ今はもう、どうやってここを死守するかじゃなく、どうすれば生き残れるかを考えねえといけねえ段階だ。
「くそっ、なんとかしねえと・・・あたしはこんなところで死ぬわけにいかないんだ・・・」
いつもは傲慢で強気なミシェリアも、オレらのすぐ後ろで、この状況をどう切り抜けるか必死に考えてる。
今更言ってもどうしようもねえが、こういう時、こいつが後方の安全な場所にいてくれりゃ、ヤバくなった時に召喚転送で安全な場所まで退避できるからありがたいんだが・・・。
今回みたいな時は特にそう思うぜ。
もしくは・・・。
「・・・ミシェリアがさっさと逃げるって言ってくれてりゃ、こんなことにはならなかったんだけどなぁ・・・」
「こうなってしまった原因は探るより、これからどうすれば良いかを考えようではないか」
相変わらずミシェリアの肩を持つレオンだが、確かにその通りか。
このままじゃ本格的にヤベェからな。
・・・いやまあ、もう十分ヤバくなってんだけどさ。
「・・・ボクたち、死んじゃうにゃ・・・?」
「レオンが言ったように、そうならないためにどうすべきか考えるんだ」
いつも冷静なフォーテルはこんな時も冷静だ。実に頼もしい。
「で、どうすりゃ良いんだ? オレにゃわからんから考えてくれ」
「少しはお前にも考えてもらいたいものだが、これから戦い続けるにしても撤退するにしても、まずはこの辺りから下がるべきと思う。ここは敵が多く味方が少なくてどうしようもない」
「なら、まだ生き残ってる周りの味方にも声をかけて、仲間を増やしながら下がろうぜ」
「うむ。賛成じゃ」
「わかったにゃ!」
「・・・あのよ」
ミノが不安げな表情で、ミシェリアの様子を伺いながら、ミシェリアに聞こえないように聞いてきた。
「・・・あの女。例の強制なんたらで、オレサマたちを囮にして、自分だけ逃げようなんてしねえだろうな?」
「・・・・・・・・・」
ミノの疑問に、オレは思わず目を背けちまった。
「いくらミシェリアでもそんなことしねえさ」と言いたかったが・・・実はオレもそれを考えてたからだ。
不吉すぎるから考えたくもなかったけどな。
「心配せずとも、お嬢はそんなことはせんよ」
オレたちの不安をよそに、レオンは全く心配してない。
むしろあり得ないとばかりに言い切る。
「なんでそう言い切れんだよ?」
「確かにお嬢は少々強気な性格で、苛烈な性格にも見えるが、根は優しい子じゃ」
「・・・少々強気? 苛烈な性格に見える? 根は優しい? おいおいレオン。酔っ払ってんのか?」
「ほっほっほ。いずれおぬしらにもわかるよ」
「なあ、いつも疑問だったんだが、お前だけはあの女と喋れるみてえだし、お前とあの女は一体なんなんだ?」
ミノが言ってるのは、ミシェリアとレオンの関係だ。
確かにオレも多少気にはなってたが、今まで深く聞いたことはない。
「さして特別な関係ではないよ。ただお前さん方より長く一緒にいるだけじゃ」
「けどよ――」
「話しは後にしようではないか。まずはこの窮地を脱するのが先決じゃろ?」
ミノは少し不満げだったが、ゆっくり喋れるような状況でもないのはわかってるのか、おとなしくその場は引いた。
「レオン、ミシェリアに作戦を伝えてくれ」
この中で唯一ミシェリアと意思疎通が出来るレオンがミシェリアに作戦を伝える間、オレたちで敵を防ぐ。
「・・・ちっ。仕方ねぇか・・・」
・・・良かった。どうやらミシェリアも納得してくれたらしい。
もしミシェリアが「後退なんてふざけんな!!」ってキレたらどうしようかと本気で心配してたんだが・・・マジで良かった。
「それじゃ敵と戦いながら後退するぞ! 常に仲間の場所を把握して離れないようにしろよ!」
そんなオレの掛け声を皮切りに、オレたちは敵で溢れる戦場で後退を始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます