第2話 言葉の真意
美月のあの言葉を聞いてから、ずっと頭の中がモヤモヤしていた。
(なんで彼女は誰にも頼れないからと話したのか、なんで、人と関わろとしないのか、考えてもわからない)
授業中も悩んでしまいずっとペンは変な線をノートに書くだけだった。
ある時、美術の授業の中でペアを作り似顔絵を描こうという活動が行われた。
僕は隼也の元に向かおうとしたが、ふと、美月の方を見るとやはり窓の方を向いてペアを作る気なんてサラサラないようだった。
「おーい優希、ペア組もうぜ」
「ごめん、先約があるから」
そう言って僕は美月の目の前の椅子に腰掛けた。美月は急に目の前に座ってきたことに驚いたようで、少しピクッと体を跳ねさせた。
「ねえ、美月さん、ペアがいないなら、僕とペアにならない?」
自分ながら攻めた質問だと思う。
「でも、君には確か森本君?がいるんじゃないの?私はいいからそっちにいってあげたら?私なんか書くより楽しいよ」
そう言って断られたがせっかくここまでやったんだ引くわけにもいかない。
「隼也もう他のやつと組んでた見たいなんだよね、だからさ、ね」
「そんな、バレバレの嘘付かなくていいよ、
さっきの話聞こえてたんだから」
そう言って、ため息をつく美月に僕はなにを返せばいいかわからなかった。
「僕さ、美月さんと話してみたいんだよね、この時間だけでもいいからさ」
そう伝えると、また、ため息を吐いたがその手には筆が握られていた。
「じゃあ、ペアになるけど期待はしないでよね」
そう言って、似顔絵を書き始めた。
どこのペアも話しながら楽しく描いているが僕らのところだけはしーんとしていた。
(まずい、、何か話題を)
何せ、美月に何か言っても美月が会話を終わらせてしまうため何を話せばいいかわからなかったのだ。
そんなこんなで時間が経ち絵も完成に近づいてきた頃、僕は美月に絵を見せてもらった。
すると、僕の描いたものとは雲泥の差の出来栄えだった。
「すごい、こんな、上手に描けるんだ」
「まあ、絵は少し描けるから」
僕が感嘆の声を漏らしていても美月はまた、窓の方を眺め始めていた。
ちなみに僕の作品はというと到底本人には見せれないくらい酷い出来栄えだった。
森本に見せたが、小学生が描いた絵と言われてしまうほどだ。
その日の昼休み、美月は珍しく席を外していた。
いつもは席で本を読むか外を眺めるか寝ているかの三択なのに今回は違ったため、どこにいくのか興味が出てきた。
「んっ?優希?どこいくんだ?」
「ああ、ちょっと用を足しに行くだけだ」
ああ、そうかと返答をしてまた、森本は持っていたパンを食べ始めていた。
僕はトイレにいきながら、美月がいないか探してみた。
すると、美月が廊下を歩いているのを見つけた。
「どこに向かってるんだ?」
行き先が気になって少し眺めていたが少し見て何かおかしいと感じ始めた。
どうも、美月のその歩き方はどこかふらついていて今にも倒れそう、、と思った瞬間、美月はバタッと崩れるように倒れてしまった。
「美月!」
意識せず自分から声が出ていたことにも驚いたが今はそれどころではなかった。
「美月、大丈夫か?」
急いで駆け寄り声をかけるが返答がない。
先生を呼ぼうか迷ったが探している暇はない。
僕は、背中に美月を背負って保健室まで運んで行った。
すぐに保健室に連れていくことができた。
(美月、起きてくれ)
それから、先生に見てもらい、貧血だとわかり
安心して取っと体の力が抜けてしまった。
「しかし、びっくりしたよ、ノックがあって扉を開けたら、生徒を担いで入ってくるなんて」
「すみません」
そう謝ると、先生はニコニコしながら、美月が倒れた時のこと聞いて、症状などを教えてくれた。
「まあ、人が倒れたら焦っちゃうよね。
あっそうそう、今から私、会議抜けるからその子の様子見ていてあげて」
「えっ?わかりました」
そう言って先生は保健室を後にした。
そうして僕は先生の会議が終わるまで美月を見るとこになった。
そっと美月の寝顔を見ていると、気のせいかとても落ち着いて寝ている感じがした。
(可愛いんだよな、美月って)
ふと、自分が思ってしまったことに対して驚いた。
確かに普段はメガネをかけているが目元ははっきりとして綺麗に整っている。
(何言ってんだ、、これはそう、客観的な意見だ!)
そう、自分の中で思い直して、もう一度、美月の方を見た。
しばらくすると、美月が目を覚まして、大きなあくびをした。
「美月起きたのか」
そう声をかけるとまた、びっくりして体を震わせた。
「あれ?また、薬飲み忘れたからかな?」
少し頭を抑えながら、キョロキョロと周りを見ていると不意に僕と目が合った。
「あれ?また、君、今日はよく会うね」
「美月さん、体調は大丈夫そう?」
「まあ、今は問題ないけど、君はなんでいるの?体調不良?」
「いや、僕が廊下歩いてたら少し先で美月さんが倒れたんだよ、でも何事もなくて良かった」
「もしかして、君がここまで運んでくれたの?」
そう頷くと、美月さんの目からツーっと涙が流れるのが見えた。
「ねえ、なんで、あなたは私のことなんか気にするの?」
突然投げかけられた質問に驚いたが、今自分が思っていることを口に出した。
「僕は、君のことを知りたいと思っている」
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