『続 アブドラジル』 3
それはもう、警察官も防衛隊員も大学教授も巻き込んだ、凄まじい捜索となったのである。
驚いたのは、勤め先だった。
課長さんは、真っ青になった。
『いや、まあ、なんで、あんなのに、こんなのが起こるんだべなあ。』
部長さんが慌ててやって来た。
『きみい、なにが、どうなってるんだずら。問い合わせが殺到してるずら。せつめいしだまえずらぞな。社長からそう言われただべずら。』
もちろん、部長さんも、マー・シー・ヤンが、社長の次男だとは知らなかった。
社長さんは、その事実を隠していたから、いまさら、言い出せないでいる。
しかし、じつは、心配でしかたがない。
本社最古参の、通称『そうじのおばさん』は、秘書以外で真実を知る唯一の存在である。
むかしは、社長秘書だったが、とある事情で(そいつは、明白であるが。)、秘書からは、身を引いたが、身寄りはなく、社長は、一生面倒を見ると、約束していたのである。
『あんた。助けてあげなさいまし。』
巨大な机の廻りを、入念に掃き掃除しながら、おばさんは言った。
『わかってるが。じき、見つかるさ。消えるわけがない。』
『おとついの金星は、不気味でしたよ。』
彼女は、じつは、名高い星占い師でもあった。
いまでも、内緒で雑誌に投稿したりしている。
『金星には、生物がいます。先般、ホスフィンが見つかったという記事がありましたが、あれは別として、そうしたものは、排出しない、未知の生命です。わたくにしは、見えております。あなたさまのご子息は、そこに囚われています。』
『あのなあ。はなしを、ややこしくしないでくれ。』
『荒川博士に尋ねなさいまし。』
おばさまは、社長室から出ていった。
『機嫌が悪いなあ。』
社長さんは、しゃがみこんだ。
『荒川博士? あのオカルト荒川か? 話にならん。』
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