1-6
「タントスさん。この世界、もしかして魔法があるんですか?」
私の質問に、タントスさんは少しだけ端末を確認して答えた。
「えぇ、そのようですね。信仰の力ではなく、自然の力を利用する形の技術があるようです。人々にとって身近な存在のようですね。何か気になる事でも?」
答えながらこちらに来たタントスさんの為に、私はぐるっと床に刻まれた模様を照らし出した。
そう、いわゆる魔法陣だ。
大広間の床には、私の世界で魔法陣と呼ばれていたものを彷彿とさせるような図が描かれていた。
ただの落書き? 床の模様? にしては、本が部屋の隅にばかり積まれていて、図の上には一冊もない。つまり、現在も使われているのが感じられた。
「なるほどです。こういった図形から、魔法を使う技術がこの世界にはあるのですね。カレンさんの故郷にも同じような技術が?」
しゃがみ込んで魔法陣をしっかりと確認したタントスさんは、立ち上がってからそう聞いてきた。
「いえいえいえ。私の居た世界では、どこまでも妄想の産物です」
私は手を振って否定する。欲しいと思ったことは数限りないけどね。
「そうですか、不思議ですね。同じ発想を持ちながら、実現できる世界とできない世界があるのですね」
同じものを描けば、私の世界でも魔法が使えるのだろうか?
いや、多分無理なんだろう。できないから技術として残らなかった。
ここは私の世界に似ているけど、やっぱり根本的に何かが異なる世界なんだということを、強く感じさせられる。
「何はともあれ、お手柄ですカレンさん。これで、おそらく今回の仕事の内容は魔術研究の協力ということになりそうです」
お手柄と言っている割に、何だか浮かない表情でタントスさんが言う。
何故? 私なんにもやらかしてないよね?
「魔術研究の協力ですか……。それは、具体的には何をすれば?」
私は魔法陣の存在は知っていても、魔法や魔術の知識は皆無だぞ。職人さんの肩を揉んだり、お茶を煎れる以外に何ができるんだろう。
「詳細は更に調べなければなりませんが、この部屋の魔法陣が随分と大掛かりのものに見えますです。おそらく、これが思うような作用になるよう協力するのではないかと思うです」
「つまり?」
回りくどい言い方に、何だか私まで嫌な予感を感じながら追及する。
「そこら中にあった本を読んで理解し、この魔法陣を読み解く必要があるです」
あれを? 全部?
タントスさんの浮かない表情が理解できた。やりたくないぞ。
「なんか、能力でちょいちょいとはいかないんですか?」
「本の内容は、能力で問題なく読めると思いますです。思考に関しても強化はできますが、これだけの量になりますと……」
玄関からここまでの間、殆どの場所に所狭しと山積みされていた本を思い出す。
何冊あった? 速読でも何時間かかるんだ?
「神様! もっと便利な能力をくださいよぉ!」
思わず叫んでしまっていた。
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