第2話 相葉浩太(あいば こうた)
最近、気になる女の子がいる。ここだけ聞けばすごく甘酸っぱい物語の冒頭のようにも聞こえるが、そういうわけではない。ただ本当に「気になる」だけの子なのだ。
ちょうどいま、同じ汽車に乗っているこちらを見つめているあの子だ。
これも恋の息吹を感じるシーンかもしれないが、そうではない。おれはこの感じをよく知っている。これはおれの隣、幼馴染の葵(あおい)に向けられた視線なのだと。そして、この視線に気づけない鈍感系主人公が、おれの隣で寝ているこいつ(葵)なのだ。
このようなことは、たまに起こる。大抵は葵に相手にされなさすぎて諦めるか、当たって砕け散るかの2択なのだが、彼女は違う。声をかけてくるわけでもなく、すぐ冷めるわけでもない。
もうここ2ヶ月ほど、こちらをみている。不思議だ。
4月になっても制服が変わってないから、同級生ではないのだろう。身長と可愛らしい見た目もあって幼く見える。 そして、面白い。
一度、汽車の中で近くに座ったことがあるのだが、そのとき、彼女をからかうつもりで葵の好きなタイプの話をしたら、コロコロ表情を変えていて非常に楽しい時間だった。 彼女のことを知ったのは、あの日。葵が電車で女の子を助けた日だ。腕を掴まれ、頬を赤らめる姿を見た。それからだ。彼女が熱い視線を向けてくるようになったのは。
本当に罪な男だこと。葵は早く彼女作って、その人だけにその優しさを注ぎ込めばいいと思う。 だからこそ、彼女を応援したいと思う。
そう思っていたのに、次の日には彼女を汽車で見なくなった。
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