夜叉の王宮2
旅僧の到来
その頃、ブッダガヤから旅をしてきた二人の修行者がペシャーワルの町に着いた。若い比丘(僧)アシュヴァカと比丘尼(尼僧)ダクシナだった。アシュヴァカは25歳、痩せた体に鋭い目を持つ男で、瞑想に長けた修行者だった。ダクシナは22歳、穏やかな顔立ちと長い髪を剃った頭に麻の袈裟を纏い、心優しい尼僧として知られていた。二人は悟りを求め、ガンダーラの仏塔を巡る旅の途中で、ペシャーワルの旅籠に逗留した。
旅籠の主人スダルシャンは、震える声で二人に警告した。
「夜は出歩かぬがよい。王子に夜叉が憑き、町は呪われている」
アシュヴァカは静かに頷き、ダクシナと共に部屋で瞑想を始めた。だが、その夜、窓から冷たい風が吹き込み、燭台の火が揺れた。扉が激しく叩かれ、ヤクシニーに変じたチャンドラヴァルマンが現れた。彼女は絹の衣を纏い、赤い唇で微笑みながら二人を誘った。
「我が王宮へおいで。快楽を共に味わおう」
アシュヴァカが経文を唱えようとした瞬間、ヤクシニーの姿が消え、ヤクシャの姿で再び現れた王子が二人をそっと掴み、王宮へと連れ去った。
地下室の堕落
王宮の地下室は、湿った石壁に囲まれ、苔と血の臭いが重く漂っていた。床には鎖が散らばり、錆びた鉄が若者たちの手足を縛り、喘ぎ声とうめき声が絶え間なく響き合った。壁には赤黒い染みが広がり、滴る水音が不気味な静寂を破った。中央の石台に立つチャンドラヴァルマンは、夜叉の力を漲らせ、赤い瞳で哄笑した。目の前には、旅僧アシュヴァカと比丘尼ダクシナが跪き、恐怖と抵抗の狭間で震えていた。
「お前たちも我が眷属となるのだ」
チャンドラヴァルマンの声は低く獣じみており、石壁に反響した。彼は一瞬ヤクシャの姿でアシュヴァカに近づき、鋭い爪で彼の麻の袈裟を切り裂いた。布が裂ける音と共に、アシュヴァカの痩せた胸が露わになり、彼は経文を唱えようとして唇を震わせた。続いてチャンドラヴァルマンはヤクシニーに変じ、長い髪を揺らし、ダクシナの首筋にそっと唇を寄せた。甘い息が彼女の肌をくすぐり、ダクシナは目を閉じて瞑想を保とうとしたが、夜叉の力が彼女の意志を鈍らせた。
眷属の襲撃
その時、地下室の暗がりから二つの影が現れた。夜叉の眷属となったマドゥリカとヴィシュヌパーラだった。マドゥリカはヤクシャに変異し、筋骨隆々の体に角を生やし、爪が血で濡れていた。彼女の瞳は赤く輝き、かつての織工の娘の面影は消えていた。一方、ヴィシュヌパーラはヤクシニーとなり、妖艶な美女の姿で長い髪を振り乱し、絹の衣が豊満な肢体を際立たせていた。チャンドラヴァルマンは哄笑を続け、二人の眷属に命じた。
「こいつらを我がものにしろ。聖者の仮面を剥ぎ取れ!」
マドゥリカはアシュヴァカに近づき、鋭い爪で彼の肩をそっと掴んだ。彼女の力が彼を石台に押し倒し、アシュヴァカは抵抗しようと手を振り上げたが、マドゥリカの怪力に敵わなかった。彼女は彼の袈裟を完全に剥ぎ取り、痩せた僧の身体を露わにした。マドゥリカの爪が彼の胸を撫で、赤い筋が浮かんだ。アシュヴァカは痛みに呻きながらも、「南無仏陀」と呟いたが、その声は弱々しく途切れた。
「お前のような聖者でも、快楽には勝てぬよ」
マドゥリカは低く笑い、彼の首筋に噛みついた。血が滴り、彼女の舌がそれをそっと味わうと、アシュヴァカの身体が震えた。彼女は彼に跨り、筋肉質な体で彼を押さえつけ、欲望のままに愛した。アシュヴァカの喘ぎが地下室に響き、彼の意志は夜叉の淫欲に飲み込まれていった。
一方、ヴィシュヌパーラはダクシナに近づいた。彼女は甘い声で囁きながら、ダクシナの袈裟の裾をそっと持ち上げた。
「尼僧よ、私と一つになれば解脱など要らぬよ」
ヴィシュヌパーラの手がダクシナの太腿を撫で上げ、冷たい指が彼女の肌をそっと触れた。ダクシナは目を閉じ、瞑想で心を保とうとしたが、ヤクシニーの甘い息が彼女の耳をくすぐり、身体が熱を帯び始めた。ヴィシュヌパーラはダクシナを石台に押し倒し、彼女の袈裟を剥ぎ取った。ダクシナの白い肌が露わになり、ヴィシュヌパーラの長い髪が彼女の胸を覆った。彼女はダクシナの首筋に唇を押し当て、強く吸い上げると、赤い痕が残った。ダクシナは小さく喘ぎ、抗おうとしたが、ヴィシュヌパーラの手が彼女の密かな部分に伸び、彼女の抵抗を奪った。
ダクシナの絶望
ヴィシュヌパーラはダクシナの両脚を広げ、自らの身体を重ねた。彼女の動きは執拗で、ダクシナの貞操を汚した。ダクシナは悲鳴を上げ、涙が頬を伝った。彼女の心は解脱への道が閉ざされる絶望に沈んだ。
「仏陀よ……我を許したまえ……」
彼女の呟きは弱々しく、ヴィシュヌパーラの淫靡な笑いに掻き消された。ヤクシニーの舌がダクシナの肌をそっと触れ、彼女の身体が快楽に震えた。ダクシナの瞳は濁り、尼僧としての清浄な意志が砕け散った。彼女はヴィシュヌパーラに抱かれ、夜叉の呪いに侵され始めた。爪が伸び、瞳が赤く染まり、彼女の喉から唸り声が漏れた。貞操を穢され、解脱の道を失ったダクシナは、もはや聖者ではなく、夜叉の眷属へと堕ちつつあった。
アシュヴァカの堕落
同刻、アシュヴァカもまたマドゥリカの淫欲に抗えなかった。彼女の筋肉質な体が彼を押さえつけ、激しい動きで彼を愛し続けた。アシュヴァカの心は仏陀への不犯の誓いを守ろうと葛藤したが、マドゥリカの力と快楽に屈した。彼の身体は熱を帯び、汗が額を濡らした。彼女が彼の耳元で囁くと、アシュヴァカの意志が崩れ、彼は自ら彼女に手を伸ばした。
「もっと……もっとだ……」
彼の声は掠れ、僧としての誇りが消えた。アシュヴァカはマドゥリカに応え、彼女の背中に爪を立てた。血が滲み、二人の喘ぎが混じり合った。
その時、ヴィシュヌパーラがダクシナから離れ、アシュヴァカに近づいた。ヤクシニーの姿で彼の首筋にそっと唇を寄せ、甘い声で誘惑した。
「僧よ、私も味わえ」
アシュヴァカはヴィシュヌパーラの妖艶な姿に目を奪われ、彼女に手を伸ばした。彼女の豊満な胸に触れ、唇を重ねると、彼の心は完全に淫欲に溺れた。仏陀への誓いは破られ、アシュヴァカの瞳が赤く輝いた。彼はヴィシュヌパーラを抱き、彼女の身体に沈み、夜叉の眷属としての欲望に身を委ねた。
登場人物
◯チャンドラヴァルマン (Chandravarman)
ガンダーラ王国の王子、ヴィクラマシーラの次男。
年齢: 20歳。
特徴: 長身で彫りの深い顔立ち、黒髪を金の飾りで束ねた美男子。かつては民に愛されたが、夜叉に憑依されて変貌。
役割: 夜叉(ヤクシャおよびヤクシニー)として町の若い男女を王宮地下に連れ込み犯し、眷属を増やす。最終的に菩薩との戦いで浄化され、正気を取り戻す。
◯ヴィクラマシーラ (Vikramashila)
ガンダーラ王国の王、チャンドラヴァルマンの父。
特徴: 息子の異変に気付くも、夜叉の力を恐れて手を下せない優柔不断な支配者。
役割: 物語の背景として王国の統治者であり、息子の救済後、アシュヴァカとダクシナに感謝を示す。
◯マドゥリカ (Madhurika)
織工の娘。
年齢: 17歳。
特徴: 細い腰と長い黒髪が自慢の美少女。
役割: ヤクシャに変じたチャンドラヴァルマンに犯され、ヤクシニーの眷属となる。その後、町でカーリカを誘惑し犯し、夜叉の呪いを広げる。菩薩の光で浄化され人間に戻る。
◯ヴィシュヌパーラ (Vishnupala)
鍛冶屋の息子。
年齢: 19歳。
特徴: 逞しい体と純朴な顔立ちを持つ若者。
役割: ヤクシニーに変じたチャンドラヴァルマンに犯され、ヤクシャの眷属となる。その後、ラージャンを襲い、アシュヴァカとダクシナを犯す。菩薩の光で浄化され人間に戻る。
◯カーリカ (Kalika)
マドゥリカの友人の娘、花売り。
年齢: 16歳。
特徴: 市場で花を売る可憐な少女。
役割: ヤクシニーとなったマドゥリカに誘惑され犯され、夜叉の眷属となる。物語終盤で浄化される(詳細描写なし)。
◯ラージャン (Rajan)
酒場の若者、衛兵。
年齢: 21歳。
特徴: 屈強な体を持つ若者。
役割: ヤクシャとなったヴィシュヌパーラに襲われ犯され、夜叉の眷属となる。物語終盤で浄化される(詳細描写なし)。
◯アシュヴァカ (Ashvaka)
ブッダガヤからの若い比丘(僧)。
年齢: 25歳。
特徴: 痩せた体に鋭い目を持つ、瞑想に長けた修行者。
役割: ダクシナと共にペシャーワルに逗留し、夜叉に連れ去られる。マドゥリカとヴィシュヌパーラに犯され、仏陀への誓いを破るが、菩薩の光で救われる。
◯ダクシナ (Dakshina)
ブッダガヤからの若い比丘尼(尼僧)。
年齢: 22歳。
特徴: 穏やかな顔立ち、長い髪を剃った頭に麻の袈裟を纏う心優しい尼僧。
役割: アシュヴァカと共にペシャーワルに逗留し、夜叉に連れ去られる。ヴィシュヌパーラに犯され貞操を穢されるが、観音菩薩が憑依し夜叉と戦う。最終的に町を救う。
◯スダルシャン (Sudarshan)
ペシャーワルの旅籠の主人。
特徴: 町の異変を知る小心者。
役割: アシュヴァカとダクシナに夜叉の危険を警告する脇役。
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