第41話 塚原卜伝

 武蔵がリンと共に新たな旅を始めてから数ヶ月後。二人は、とある小さな村に辿り着いた。その村は、豊かな自然に囲まれ、穏やかな雰囲気が漂っていた。

「武蔵さん、この村はとても静かで良いところですね」

リンは、笑顔で言った。

「ああ、ゆっくりと休むにはちょうどいいかもしれない」

 武蔵も、穏やかな気持ちになっていた。

 二人は、村の宿屋に泊まり、しばらくの間、村で過ごすことにした。武蔵は、リンと村の子供たちと遊んだり、村人と交流したりして、穏やかな日々を送っていた。

 しかし、その平穏な日々は長くは続かなかった。ある日、村に一人の男が現れた。その男は、異様な雰囲気を纏い、凄まじい剣気を放っていた。

「俺の名は塚原卜伝。最強の剣士を求めて、この地にやってきた」

 男は、低い声で言った。

 村人たちは、その凄まじい剣気に恐れをなし、震え上がった。武蔵も、その男の只者ではない雰囲気に、警戒心を抱いた。

「武蔵さん、あの人は一体…?」

 リンは、不安そうな表情で武蔵に尋ねた。

「分からない…だが、只者ではないことは確かだ」

武蔵は、剣を手に取り、男に立ち向かった。

「俺と勝負しろ、武蔵!」

 卜伝は、武蔵に挑戦状を叩きつけた。

「分かった。受けて立つ!」

 武蔵は、覚悟を決め、卜伝との戦いに挑んだ。

二人の戦いは、凄まじいものだった。卜伝の剣技は、神速であり、武蔵は、その猛攻に苦戦を強いられた。

 しかし、武蔵もまた、リンを守るという強い意志を胸に、必死に戦った。そして、激しい攻防の末、武蔵は、卜伝の隙を突き、渾身の一撃を放った。

「ぐはっ…!」

 卜伝は、膝をつき、地面に倒れた。

「俺の負けだ…」

 卜伝は、静かに呟いた。

 武蔵は、剣を納め、卜伝に近づいた。

「あなたは、本当に強い剣士だ。だが、俺には、守るべきものがある。だから、負けるわけにはいかなかった」

 武蔵は、卜伝に言った。

 卜伝は、武蔵の言葉に感銘を受け、静かに頷いた。

「分かった。お前の強さ、しかと見届けた。俺は、この村を去る。だが、いつかまた、お前と剣を交えたい」

 卜伝は、そう言い残し、村を後にした。

 武蔵は、卜伝の背中を見送り、静かに息を吐き出した。リンは、武蔵の無事を喜び、彼の胸に飛び込んだ。

「武蔵さん、ありがとう。私を守ってくれて…」

 リンは、涙ながらに言った。

「ああ、リン。俺は、お前を必ず守る」

 武蔵は、リンを優しく抱きしめた。

 二人は、再び穏やかな日々を取り戻した。しかし、武蔵は、卜伝との戦いを通して、自分の弱さを痛感していた。

(俺は、もっと強くならなければ…リンを守るために…)

 武蔵は、心の中で誓った。そして、彼は、リンと共に、さらなる強さを求めて、再び旅に出ることを決意した。

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