第40話 リンとの出会い、そして別れ
翌日、武蔵とお梅は、新たな目的地へと向かうため、村を出発した。道中、武蔵は昨日の出来事を思い出し、どこか落ち着かない様子だった。
「武蔵、どうかしましたか?何か考え事をされているようですが…」
お梅が、心配そうに尋ねた。
「いや、何でもない。少し、旅の疲れが出たのかもしれない」
武蔵は、平静を装いながら答えた。
二人は、しばらくの間、静かに歩いていた。やがて、二人は美しい花畑にたどり着いた。そこには、色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが漂っていた。
「まあ、綺麗な花畑ですね」
お梅は、目を輝かせながら言った。
「ああ、本当に綺麗だ」
武蔵も、花畑の美しさに見とれていた。
その時、花畑の中に一人の少女がいることに気づいた。少女は、白いワンピースを着て、花冠を被っていた。その姿は、まるで花畑の妖精のようだった。
「こんにちは、お嬢ちゃん。こんなところで一人で何をしているんだい?」
武蔵は、少女に話しかけた。
「こんにちは、お兄さん。私は、ここで花を摘んでいるの」
少女は、愛らしい笑顔で答えた。
「そうか、綺麗な花がたくさん咲いているからね」
武蔵は、少女の笑顔に見とれていた。
「私の名前は、リン。お兄さんたちの名前は?」
少女は、武蔵たちに尋ねた。
「俺は武蔵、こっちはお梅だ」
武蔵は、自己紹介をした。
「武蔵さんとお梅さん、素敵な名前ですね」
リンは、二人に微笑みかけた。
リンは、花畑に咲く花について、楽しそうに武蔵たちに話してくれた。武蔵は、リンの笑顔を見ていると、心が洗われるような気持ちになった。
「リンちゃん、そろそろ行かないと日が暮れてしまう。また、遊びに来てもいいかな?」
武蔵は、リンに尋ねた。
「うん、また来てね。待ってるわ」
リンは、笑顔で手を振った。
武蔵とお梅は、リンに別れを告げ、再び旅を始めた。武蔵は、リンとの出会いを思い出し、心が温かくなるのを感じていた。
(リン…あんなに純粋な心を持った子がいるのか…)
武蔵は、リンの笑顔を思い浮かべながら、静かに呟いた。
数日後、武蔵とお梅は、人気のない荒野を歩いていた。すると、突然、数人のならず者が現れ、二人に襲い掛かってきた。
「へへへ、いい女を連れているじゃねえか。おとなしくお宝を置いていきな!」
ならず者たちは、下品な笑みを浮かべながら、武器を構えた。
武蔵は、剣を抜き、ならず者たちに立ち向かおうとした。しかし、その時、彼の脳裏にリンの笑顔が浮かんだ。
(リン…あの子を悲しませるようなことは、絶対にしたくない…)
武蔵は、リンのことを思い出すと、戦う気力を失ってしまった。
「武蔵、しっかりしてください!私が相手をします!」
お梅は、魔法を使い、ならず者たちを攻撃した。
お梅の強力な魔法により、ならず者たちはあっという間に倒された。しかし、武蔵は、お梅の活躍をただ見ていることしかできなかった。
戦いが終わり、お梅は、心配そうな表情で武蔵に近づいた。
「武蔵、一体どうしたんですか?いつものあなたらしくない…」
武蔵は、お梅の問いかけに、答えることができなかった。彼は、自分の弱さに情けなさを感じていた。
「お梅…すまない。俺は…もう、お前と一緒に旅をすることができない」
武蔵は、絞り出すように言った。
「え…?どういうことですか?」
お梅は、驚きを隠せなかった。
「俺は…リンという女の子と出会い、彼女を守りたいと思った。お前と一緒にいると、どうしても戦いに巻き込んでしまう。だから…」
武蔵は、目を伏せながら言った。
「そんな…!私がいなければ、あなたはすぐにでも死んでしまう!」
お梅は、涙を浮かべながら叫んだ。
「分かってる。でも、俺は…もう決めたんだ」
武蔵は、冷たい口調で言った。
お梅は、悲しみをこらえながら、静かに頷いた。
「分かりました。あなたの気持ちは、よく分かりました。さようなら、武蔵」
お梅は、涙を拭い、背を向けて歩き出した。
武蔵は、お梅の背中を見つめながら、静かに呟いた。
「さようなら、お梅…」
二人の旅は、こうして終わりを迎えた。武蔵は、リンと共に新たな旅を始め、お梅は、一人で故郷へと向かった。二人の未来は、それぞれの道へと分かれていった。
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