第21話 ミスしたら切腹するくらいの気概でね
何てこった。社会さんまでもが乗ってしまった!というか一番えげつないこと言ってたよ!?害虫って結局言ってたよ!?生まれてきたこと後悔するまで追い詰めるつもり!?
「ふふ、話が早くて助かるよ♪期間は明日からの2日間。店舗としての総合利益が高い方の勝ち、せいぜい頑張ってね♪」
美術さんは最後に理科さんの方を見て、意気揚々と鼻歌を歌いながら帰っていった。
:
「これより!シャドーフローマート撲滅計画作戦会議を開始する!」
裏ではこれから決死の戦いに挑む武士かのように国語、数学、英語、理科、社会が円を成しているちなみに店内はオーナーが一人で切り盛りしている。誤発注のダメージから使い物にならないオーナーの頭脳は使い物にならない。
「つってもどうしても目新しさでは新規店舗には勝てねぇッスよ!どうします社会さん!?」
「かの孫子は言った…勝負とは敵を知ることから始まると」
社会が腕組みをしながらそう言った時、扉がガチャリと開く。
「た、ただいま戻りました…!シャドーフローマート、侮れないですよ…!というかあれはコンビニなの!?って感じです!」
敵城視察に出向いていた伏兵…そう、僕道徳はその“圧倒的普通さ”を利用して店内に紛れ込み写真を撮ってくる任務に成功。できた写真をみんなが覗き込む。
「何じゃこりゃ!?絵売ってんぞ!?」
「注文してすぐに出てくる料理…まるで定食屋だね」
「筋肉をつけたいあなたへぇ!?何かトレーニングしてる奴もいるんスけど!」
そう、従来のコンビニのイメージとは大きくかけ離れた言わば“何でも屋”のそれに僕も目を疑った。まるで総合アミューズメント施設。コンビニとは、の広辞苑を書き換えたいくらいだ。
あまりの驚きに一瞬誰も喋らない静かな時間が生まれる。
「…どう戦うカ」
こういう時に空気を読めない数学さんの一言はありがたい。みんなを自然に現実世界に引き戻してくれる。
「大幅な値引きをして客を呼び込んだとしても、競うのは総合の売上高。赤字になったら意味がない、そして現段階で誤発注で仕入れ値が圧倒的にオーバーフロー…」
何つータイミングで誤発注してんだあいつは、というみんなの圧がレジでせっせと働くオーナーに突き刺さったのかオーナーの挨拶が翻っていたのが聞こえてきた。
そうか、誤発注、しかも1000個。既にうちはマイナスを大きく抱えたところからのスタート…
「…あ、でも、」
僕はポツリと、自然に呟いていた。
「ん?どーしたんだよ道徳いつも通り特徴のない顔して」
「国語さん瞬間的に僕のアイデンティティをいじるのやめてください。思ったんです、この1000個のフライヤーを2日間で売り切れば、見込みはあるんじゃないかって」
「いや1000個ッスよ!?」
「シャドーフローマートは確かに奇抜なことをしてお客さんの目を引いていました。いかにも“芸術作品”を作るかのように。けど、お馴染みのコンビニ商品って少なかった気がするんですよね」
「…確かに、写真を見ると従来のお弁当やデザートとかはあまりないね」
「物珍しさに全振りした感じのビジネスモデル、それにあれだけの大掛かりなオプション施設を設ければ維持費や稼働費だって馬鹿にならないはず」
「…奇抜vs定番、芸術vs普遍、副教科vs主教科…うん、道徳くんの意見は最もかもね。お客さんが求めているものが非日常であるとは限らない」
「成程…やっぱいつものがいいや〜って寄ってきた客を絡め取ってくわけだな〜」
「でも本当に1000個なんて売れるんスかね…流石に」
「…理科さんがイル」
数学さんが理科さんの名前を出すとみんなの視線がそちらを向く。
「え、…僕?」
「理科さんはフライヤーの達人…理科さんの作ったフライヤーしか買わない変な客もイル」
「変なって言ったな」
「でもいつもの美し揚げをしただけじゃ…」
「美し揚げっていうんだあれ」
「理科。何のために個性豊かな従業員がこのシャフマートに揃っていると思ってるんだい?」
「え?」
社会さんが理科さんの肩に手を置いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます