第17話 社会人にとっての自由とは
「ちぇっ、これだからクソ理系は。確率論がぁ〜とか言って一時は大人しく殺されるのを待ってた癖に、ま、いいやまた同じような仕事をしねー限り、テメェとはもう会うことァねーからな、精々今度はまともな仕事でも探すんだな〜」
国語は首をコキコキと鳴らしながら立ち上がり、後ろにいる数学を水にひらひらと手を翳した。
「…おい、」
「あ?…をっ!」
パシリ。国語の手に数学の投げた何かが収まる。
「…金!?」
「さっき組長ぶっ飛ばした時、財布があったカラ。精々今回の報酬にでもして本でも買エバ」
「あん?抜かりねぇなぁ…星の王子様血まみれにした弁償ってか?お前は報酬いいのかよ」
「…俺はどうやら金のためにこの仕事したわけじゃなかったカラ」
数学はそう言って、胸ポケットに入っていた煙草の箱をポイ、と投げ捨てた。ふーん?と国語は意味深な笑みを浮かべて、財布を着流しの内側にしまう。
「ま、それなら遠慮なくもらってかんな〜♪」
国語は上機嫌な顔をして去っていく国語の背中を見つめた後、数学は空に向かって拳を小さく突き上げ、心の中で呟いた。
自由だ。
そうだな、今度は…どうせもう少しだけ生きてみるのなら…真っ当な仕事をしてみよう。
今までに味わったことのない解放感が、数学の身体中を風のように駆け抜けた。
「ちょっと君、これどゆこと?どないしてくれるのぉ?」
「え?」
少し小さくなった距離にいる国語の目の前に、スーツの男が現れる。笑顔を浮かべてはいるが何やらお怒りのようで、近くに停まっていた黒塗りの高級車を指差した。
「ここに停めてあったボクの車…何や知らへんけどベコベコのボコボコのバリバリなんやけど…これ、周りに転がってるようわからん男達も含め…君がやったんか?君も怪我しとるようやしなぁ…」
この男、数年前のオーナーである。オーナーの所有物らしい高級車は見るに堪えないことになってしまっており国語は顔を青ざめさせていく。数学もそんな様子を見てひっそりとこの場を去ろうと思ったが簡単にはいかなかった。
「きっちりこのお題は働いて返しぃ…!ボク最近コンビニ開いたねん、車代1000万…返すまで解放せんからなぁ…!」
「ちょ、ちょっと待って!勘弁!無理ぃ!俺金ねぇし!つーか働くの大嫌いだし!いや、なら!ならせめて!あいつも道連れにしろ!」
「…ハ?」
こうして国語、数学は借金500万を背負い、シャイニングフローマート改め社不マートで働くことになったのである。
:
「…っていうことがあったんだ」
「すみません…ものすごく漫画の中の話のようでちょっと…脳みそついていけてないんですけど…あの人達えと、ヤク、ザ…?実はめちゃくちゃやばい人達なのでは…いや、頭の方はやばいのは知ってましたけど…」
「んだとぉ道徳テメェ!」
「あれ?国語寝たんじゃなかったの?ずっと話聞いてたんだぁ?」
「いやっいや!それはぁ!っつーかぁ!俺の話までしなくてもよかったじゃないですか社会さん!」
「ふふ、数学を語る上で国語の存在は必要不可欠だと思ってね。でも、合ってたでしょ?」
「いや、あん時ゃ俺が全員ボコしたな確か」
「はいはい」
僕に撮っては御伽話のような内容だったけれど、どうやら本当のことだったみたいだ。恐ろしい。
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