第15話 文系と理系は社会に対する考えが違うのさ
数学は一瞬国語の言っていることの理解が追いつかなかった。しかし目の前の男の目は冗談なんて言ってるか感じではなくて、解は自分にのみ委ねられていることを実感する。
「手を組む…?潰す…?何を言ってる?第一お前は敵ダ」
「どうせ俺たちが生きてるってわかれば消しにくるだろうけどな。お前あいつら一人で片付けたんだろ?俺とお前が手組めば俺たちが生き残る確率が増せるんじゃねぇ?」
「…」
数学は黙る。
「兄貴…!数学の奴がまだ生きて…、って国語の馬鹿も生きてやすぜ!」
「おっと、都合よく向こうからおいでなすった」
微積組の組員が現場の様子を確認しにきたようで、ゾロゾロと40程の黒尽くめの男たちが姿を現す。
「あ?…はっ、けど数学に至っては虫の息じゃねぇか。おいお前ら、二人まとめて…殺れ」
微積組の長が合図を出せば、一気に襲いかかってきた。
「っ、」
数学は動こうとするも激痛で体を硬らせる。
「2人に大人数って卑怯じゃないですかぁああああ!?大人って卑怯な生き物ですねぇ!」
国語は高らかにそう言うと、近くに落ちていた木の棒を掴み、刀のように振り回した。
「ウガッ!?」
前線にいた組員数名が吹っ飛ぶ。しかし勢い凄まじいため木の棒も折れてしまう。
「ありゃ、やっぱこんな細い木じゃぁダメか」
国語は元いた屋根の上に身軽に飛び乗り、何かを手に持ちそのまま勢いよく降りてくる。
「刀…!?こいつ、」
「おい気を付けろ、こいつの化け物みてぇな戦績を忘れたか!?こいつは刀を使っていくつもの組をたった一人で滅ぼした…!」
「な〜今月の生活費、早く恵んで!」
国語はニヤリと笑ってものの見事な太刀で次々に男たちを倒していく。その姿はまるで日本を日の出へと導いた侍のような、いや、そんな崇高なものではないかもしれないけれど、数学の目にはとても“自由に”見えた。
「ぐっ…何だこいつマジで…!一人だぞ!?」
「あっちの瀕死の奴から潰せ!」
数人が数学に襲いかかってくる。国語はしゃーねーなぁ、といい彼等に刀を入れようとするも、すぐに手を引っ込めた。
ガンッ!
「「ぐぁ!」」
数学が血を垂れ流しながらも国語の横に立ち、組員達を殴り飛ばしたのだ。ヒュ〜♪と、国語が口笛を吹く。
数学は小さく舌打ちをしながらもタバコを新たに咥え、ふー、と煙を吐いた。
「おいおい未成年の喫煙は違法だぜ理系脳くん」
「…銃刀法違反を当たり前のようにしてるクソ文系に言われたくナイ…」
数学の強気な返しに国語は口元を釣り上げる。数学も漸くその気になったか、と。
「よっしゃ、そうと決まれば文理相容れな〜いコンビであの組織食っちまおうぜ、今日の晩飯は久々に肉かな」
「これだから楽観主義者のざっくり計算はダメなんダ…確率論に0はナイ。余裕をかましてたら足元掬われる」
「へーへー、お堅ぇお堅ぇ、まぁいいや、1でも生き残る確率があんなら十分だ」
国語は意気揚々にストレッチをした。
「…一つ、聞いておきたいことがアル」
「んぁ?」
数学は顔を国語から背けながら、小さく問う。
「…お前は、どうしてこんな仕事を?」
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