第14話 社会は金で回ってる

「うわっつーかお前血だらけすぎね!?ってあ゛―――――!俺の本がぁああああ!何してくれてんだよお前の血で染まってんじゃねぇか!星の王子さまが魔王様になってんじゃねぇか!」




時代に合わない着流しを着た桃色の髪の男は屋根から勢いよく飛び降りてくる。数学の横に落ちた本を取り上げると悲惨な状態になっていることに嘆き悲しんだ。そして何故かその責任を数学に押し付ける。





「まだ半分しか読んでねーのにぃ!働きたくねーから最低限度得た金で買ったのにぃ!まぁあの仕事ちょっと割良かったけど!あ!つかそういや今からも金貰えんだっけか、何か全身黒い服着た目つきのわりー奴が金持ってくるからそいつぶっ倒せって…」




一人でにべらべらと話した桃色髪の男…国語は目の前で死にかけている全身黒い服の目つきの悪い男を発見し少し考える。




「…ほぉ、本クラッシャー、お前がそれ?」




国語目に怪しい光が宿る。数学は目の前で一人劇をし続ける国語に何も言うことなく眺めていたが、国語の表情が変わったことを察し目を細める。国語は確信したようにふーんと言い、口元をニヤリと上げた。




「あんなに大人数いてもどーせやることねーだろーし、あんな大人数倒せる訳ねーだろーしと、万が一があれば最後の一人として出てきゃい〜や〜と思ってたけど…万が一ってのァ起こるもんだなぁ〜、けど、もう虫の息ってわけか」



国語も自分を殺すために召集された輩であることを数学も確信する。胸元から血に塗れたタバコを一本取り出し、吸った。




「逃げねーのぉ?」



国語の問いかけに数学は答える。




「…無駄な足掻きは嫌いダ。数式に解が必ずあるように、変えられないものはこの世にたくさんある。それに…もう、縋るものもナイ」


「解ねぇ…随分お利口さんなこって。死ぬ間際だってのに悟りなんか開いちゃったんですか。お前のその考え方、俺ァ嫌いだね」


「…」



早く仕留めればいいものを。目の前で語り始める国語に数学は眉を顰める。



「お前不自由な奴だな」


「…あ?」




国語の言葉に数学は思わず眉間を動かし鋭い目を動かす。




「世の中の物事に決まりきった答えなんてあるものなんてねーよ。だから物語の最後はどうなる誰にもかわかんねー。だから物語は面白ぇ」


「変わる可能性にあるものに縋って希望を捨てないことの方が…よっぽど不自由だと思うガ?」


「あん!?大体なぁ物語っつーのは人の心なんだよ、確実な答えなんてねーんだよ、平家物語の冒頭知んねーのかぁ!?諸行無常の響きありだぞコラァ!」


「…お前とは相容れナイ」




数学は煙を吐き捨てた。縋る方が苦しいのだ。自分がそうだったように。それが答えである限り、自分は全てを諦めたまま人生を終えられるのだから。




ドゴン、



地面が揺れる。さっきの倉庫の方からだ。まだ爆弾装置が残っていたらしい。これだけの時差で発動するように設定されていることからも、微積組は誰一人として残すつもりがなかったことがわかる。





「…爆発、成程ねぇ。あのクソおっさん達、鼻っから俺達のことも闇に葬るつもりだったってか、金貰えねーじゃんばっかばっかしぃ〜どうせお前が持ってきた金も偽物だろーなぁ」




国語も真相に気が付いたようで、下唇を突き出した。



「んで、どーすんだよお前」


「…どーする?」


「このまま死んでくのか?それとも俺と手ェ組んで微積組潰すの?」

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