第5話

寝るからって。


相変わらず勝手な男に開いた口が塞がらない。




手に持っている携帯を呆然と見つめ、どうしたものか、とため息を吐く。



いつかかってくるのかな。先にご飯作っててもいいかな。そんなことを考えながら携帯をテーブルに置こうとした瞬間、



ブブ、と規則的な振動を震わせる哉希の携帯。



画面を見れば、"ソウ"と表示されてあり、呼び名のままなんだ、そう思いながら指でスワイプした。




「もしもし。」


『••••茉依?』


電話を通した声が少し低い奏弥は、驚きを含んでいる。あたしが出ると思ってなかったみたいだ。



「奏弥?あのね、」


『•••カナ寝ちゃったんだね。』



何も言ってないのに状況をすぐさま察する奏弥は相変わらず怖い。



「うん、ごめんね?」


『ふ、何で茉依が謝るの?』


「だって、あたしのせいだから•••、」


『茉依のせいじゃないよ。心配性すぎるカナが悪いんだよ。自己管理下手すぎ。』



そう言う奏弥の声は呆れていて、苦笑いを浮かべているのが目に取れる。



それを想像して少し笑みを零すと、電話の向こうからも僅かに聞こえる笑い声。



「でも今日行かなきゃダメだって、言ってたよね?」


『そうなんだよね。とりあえず今から行くからそれだけカナに伝えといてくれる?』


「伝えといてって、哉希今寝て、••••ツーツー、」



るから無理だよ、そう言おうとしたのに、言う前に電話を切られてしまった。



何でこんなに勝手な男ばかりなの。



苛立ちが溢れ出しそうになるのを堪えて、携帯をテーブルの上に置き、哉希が寝ている部屋に目を向ける。

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