第4話

「おっ、起きてたの?」


驚きが隠せずに、目を開いて問いかけると、



「今起きた。」



欠伸をしながら答えた哉希は、そのままあたしの手を離した。



行く末を失った手が宙ぶらりん状態で、なんか気まずくて慌てて手を膝に乗せる。



「で、何か用?」



「え、あ、いや。用とかじゃなくて、前髪が目にかかりそうだったからなくとな、く?」



「何で疑問形?」とツッコミながらも、その頬は緩んでいて。寝起きだからか表情が豊かな気がする。



何で?って言われてもな。



「起きると思ってなくて、びっくりしたから。」



「ふぅん、」興味なさそうに呟いた後、ふらりと立ち上がり、あたしに携帯を投げた。



投げられたそれを落とさないようにキャッチして「な、に!」少し声を荒げる。



「電話、きたら出といて。」



「•••は、?」



「俺寝るから。」



それだけ告げると、スタスタと歩いて行く後ろ姿を急いで止める。



「電話って誰から!?」



「ソウ。」



振り返り様に眠そうな目をこちらに向け、一言だけ言った後、今度こそ部屋に入っていった。

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