第3話
ーゆっくりと目を開ける。
懐かしい過去に泣きそうになるのを何とか耐え、怠い体に力を入れ起き上がる。
久々に見た。幸せだった思い出。
最近は見なくなってたんだけどな。
なんて思いながら、涙が出てないか頬を触り確かめる。
その時、体を包む温もりに気づき見ると、ふわふわの毛布があたしの体に掛けられていて。
あ。そうだ。あの後寝ちゃってたんだ。
記憶を手繰り寄せ、昨日のことを思い出した。
手に触れふわふわの感触を味わっていたら、隣のソファに気配を感じてそちらに目を向けた。
「、え、なん、で、?」
そこには、座ったまま目を閉じて眠っている哉希がいて。
あたしがここで寝てたから、哉希も一緒にいてくれたの、?
そう思うだけで何故だか胸がじんわり熱くなってくる。
「•••ばかじゃ、ないの、」
あたしなんか心配しなくていいって言ってるのに。優しすぎるでしょ。
なのに、出た声は僅かに震えていて、自分の声とは思えないほど優しく感じた。
ふと時計を見ると、8時前で。
することも特にないので、起きそうにない哉希の寝顔を眺める。
あどけない寝顔は年相応に見え、不思議と顔が綻ぶ。いつもの鋭い目が開いてないだけでこうも違うのか。
だけど、寝ててもその顔の綺麗さは際立っている。
サラサラの漆黒の髪が目にかかりそうなのが気になって、起こさないようにそーっと手を伸ばす。
前髪にあたしの手がかかったその時、
「なに。」
手を捕まれ、いきなり目を開けた哉希に、心臓が飛び出そうになった。
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