こんなにチョロくて大丈夫なんだろうか?
第6話
そして冒頭に戻る…
(なぜ、なぜっこんなことに?!)
彼の両腕に軽く収まっている状態だ。しかも、お互い裸で!?
昨日の夜、バーで飲み比べをしたまでは覚えているが、それ以降の記憶がない。
せめて着るものを探そうかと寝返りを打ちたかったが、少しでも動いて起こしてしまうのは怖い。
ここから逃げるにしても、いつかは起きなきゃいけない。でも、起こしたくない…!
(絶対、殺される……!)
ふいにぎゅうっと腕に力が入った。起きたのかと思いと心の中で悲鳴をあげるが身じろいだだけのようだった。
結構腕の筋肉がしっかりしている。今も何か運動しているのだろうか。
(起こしたら…死ぬよなぁ…でも…)
(めっちゃトイレ行きたい…!!)
昨日は本当に飲みすぎたんだろう。頭痛もひどいのだが、尿意も限界に近い。
ビービービービー!!!
突然アラームが鳴った。この音は私のじゃない。
「うるせぇ…」
起きた彼はスマホのアラームを止める。
(もう逃げられん…覚悟を決めよう)
「………」
まだ開かれないぼんやりとした目がこちらに向けられる。
「…は?」
わお、すごい。寝起きも本当に顔怖いや。
「おっ、おはよう、ございます…」
眉毛がくっついてしまうんじゃないかってぐらい眉間に皺が寄せられる。
「っ!?」
「ひょえっ」
漫画のような動きでババっと起き上がった。
鳩が豆鉄砲を食ったようってこう言う顔かと思った。
困惑してらっしゃる。
色んな顔をして、お魚みたいに口をパクパクさせている。
(やっぱ無理、居た堪れない…)
「あっ、えっと、トイレ行ってきますね!」
立ち上がろうとした瞬間、ズキィと腰が響いた。
「うぅっ!?」
ベッドから起き上がろうとしたのだが、腰が抜けて立てない。
「…どうした?」
寝起きのせいもあるだろうが、大分不機嫌な声色でらっしゃる。
「ひっあっ、えっと…」
「あ?」
誤魔化そうかとも思ったが、ビビりすぎて何も思いつかなかった。
「こっ腰…痛くて、ちょっと、動けなくて…」
「っ…はぁ」
(うぅ…ため息つかれた…。元はと言えばお前のせいでもあるんだぞ…!…やばいっ、もれる!)
急に身体が近付いてきた。思わず縮こまるが、伸びてきた腕にひょいっとシーツごと持ち上げられる。
「え?」
「なんだよ」
「やっ、あの、重いからっ」
「は?軽すぎるわ。」
なんと、トイレまでお姫様抱っこで連れていってくれたのだ。
・
・
・
結局、声をかけてきた藤代にまた姫抱っこで迎えにきてもらった。トイレが終わっても立てなくて、だからといって呼ぶのも怖いし、どうしたら分からなくてしばらく固まっていたのだが、流石に長すぎて声をかけられた。
バスローブも用意してくれていた。
「あの、色々、ごめんなさい…」
「あ?」
ひえっこわい
声だけでビクッとしてしまうのは、もう癖だ。
「…俺も悪かったな」
そう言ってTVの近いソファに下ろしてくれる。
「風呂、溜めてくる」
「あっはい。お願いします」
洗面所に行って戻ってくると「5分寝る」とタイマーをかけ、さっきまで2人で寝ていたベッドで横になってしまった。
ふと、部屋を眺める。1人のはずなのに、ほかに誰か呼ぶつもりだったのだろうか。ベッドがふたつある、シングルツインの部屋だった。
(なんでもう一個のベッドで寝ないんだろう…)
なんて考えたが、向こうのベッドをよく見たら分かった。
こりゃ寝れるわけがない。
そりゃあもう「夜にナニしまくってました」と誰もが分かるくらいグショグショだった。
(……覚えてなくて…よかった?)
自分のナカに、異物感は多少残っているが、何も入ってる感覚は無かった。
(ゴムはしていたんだろう…いやしていたんだろうか…)
顔が熱くなったり、青ざめたり今日は忙しい…。
ふいっと、ベッドには目を向けないでテレビに集中することにした。
しばらくぼんやり眺めている。
突然鳴ったアラーム音にまた驚いてしまう。
ムクっと起きるとそのまま洗面所に向かって行ったから、お風呂に入ってくるだろうと思ったのに戻ってきた。
私の近くに来て目線を合わせるようにしゃがむ。
「先、入るか?」
目線を合わせてくれるなんて珍しい。
「いや、まだ、足に力が入んなくて…」
しばらく、沈黙が流れた。
(なんだよ…さき入っていいよ?)
「あの、さきっ」
「じゃあ」
「はい!?」
「…じゃあ、あとでいい?」
「はいっ…えっと、あとで良いです」
「おっけ」
(流石に一緒に入ろうと言われていたら戸惑ったよ…そんなわけないけどな!!)
藤代が上がるころには、生まれたての小鹿のような足取りもマシになったので、那智香もお風呂に入る。
(これが「腰が砕ける」というやつか……一体どれだけやったら、こんなに歩けなくなるって言うんだろう)
まあ鏡を見れば、どれだけ「された」かなんて、分かってしまったのだが…
「う…うわぁ……」
身体に広がる赤い痕。キスマークやら噛み跡やらで背中まで大変なことになっている。
(まじか…まじで……ヤったのか…)
藤代が風呂に入ってる間、不意に目に入ったゴミ箱にゴムいくつか確認できたので避妊はしてくれていたんだろう。正確な数なんて知りたくないので薄目でしか見ることができなかったけど。
ボディソープを泡立つくらい擦ってみても、傷跡一つ消せなかった。
服を着てしまった方が見えなくなるだろと、早めに風呂を済ませた。
上がるころには、藤代もちゃんと衣服を身に着けていた。バスローブは少し小さかったのだろう。
ドレスは椅子に掛けてあったのだが、ケープが見当たらない。ワードローブも開けてみるが、中には何もなかった。スマホもない。
(どうしよ…首とか、見えちゃうよな…)
とりあえずドレスを纏う。
背中のファスナーがなかなか上がらずもたついていると
「…おい」
「あっ、ごめん、まって」
「貸せ」
後ろに回ってファスナーをあげてくれる。
(ふわぁ…昔のちょっとえっちな映画のやつだ)
なんて思っていたが
「ひょわっ!」
ついーとうなじを撫でられた。
「ははっ」
笑った?
初めて笑い声を聞いた気がする。
「何してんだ」
(いや、お前が変なことするからだろ!)
とは言えるわけもない。
恥ずかしくなってきたので、話題を変える。
「あっあの」
振り向いた時には、いつもの不機嫌な顔に戻っていた。
「…私のスマホ知らない?
「知らねーけど…バーに置いてきたんじゃないか?」
記憶を思い出してみる。確かに、席に掛けてそのままだったような気もしてきた。
「はあ…」
また、大げさなため息がつかれる。
こんなことになるとは思ってもいなかったが、今度からオフショルはやめておこう。
このまま廊下に出るのは恥ずかしいので、バスタオル羽織る。
「何してんだ?」
「…え?」
藤代が部屋のドアで待っている。
「上、取りに行くんだろ?」
「うん?」
(一緒に来てくれるの?)
優しさが逆に怖くて固まっていると、バスタオルがクイっと引っ張られる。
「これ、流石に置いてけよ」
「あっええっと…」
「なんだよ」
聞き方に不機嫌さを出すのが得意なんだろうか。答えないと外には出してくれなそうだった。
「あとが」
「あ?」
「っ、首とか、肩の跡が…見えちゃうので……」
(顔が熱い…皆まで言わすな…!!)
「ああ…」
恥ずかしさで油断していたせいで、バスタオルが剥ぎ取られてしまった。
「ちょっと」
「こっち着とけ」
視界が少し暗くなったかと思うと、ふわっと上着をかけてくれる。
失礼とは分かっているが、昔の彼からは想像もできない行動ばかりだ。
困惑して固まっていると
「ほら、お前の上着取りに行くぞ」
ドアを抑え、那智香が先に出るのを待っていた。
(ううっ、こんな…こんな!こんなので、絆されないんだからな!)
もやもやとしながらも、昨日のバーに藤代と向かう。
そういえば昨日、なんで私がバーにいるって分かったんだろう。
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