「始まりは突然に」いや、突然すぎる…

第4話

開催されている地元は遠方だったので、会社の方は溜まっていた有給を使って1週間の休みをもらった。

2人の愛猫であるシャンキーとチャムは流石に連れて行くわけにも行かない為、ペットホテルに預けることになった。知らない場所に連れて来られて不安なのだろう。「置いて行かないでよ…」と泣いている声が可哀想でこちらも泣きたくなったが、ぐっと堪えた。

(帰ったら沢山遊んであげるからね!!)

久しぶりの実家なのでゆっくり過ごすつもりだったのだが、3日で帰ろうと2人で決めた。


結局ドレス選びはギリギリで決まった。

那智香は、ピンクベージュのオフショルワンピースになった。少し胸元の露出が気になったが、綺麗な背中とデコルテは出して欲しいと言う柚季の強いアピール(願望)を受けて決めた。同じ色のレースが肩から胸元にかけてクロスしリボンになっているところは気に入っている。

柚季は、那智香とお揃いにしたかったのだが、どうしてもロングドレスを着て欲しいと言う那智香の希望でグレーのロングドレスにした。胸元に、刺繍のように縫い付けられているビジューが気に入っている。流石にノースリーブは寒いと、ケープ等のアイテムはお揃いに出来て満足そうだった。


そして迎えた同窓会。


元から可愛いと思っていたあの子はもう別人だった。めちゃくちゃ美人だった。

常に坊主頭だったあいつは髪がちょっと長い方が似合っていた。多分、今の方がモテるだろう。多分。

高校時代と比べたら、みんな垢抜けている。

彼らが今までしてきただろう努力にちょっと尊敬した。


(7年も会ってないと人ってこんなに変わるのか…)


だが、元々そんなに人の顔が覚えられる方ではないので、会う人会う人の名前を思い出すのに必死だ。

「少し休んでも良いよ。私、部活の子とも話ししてくるね。」

柚季は高校の頃から活発な性格と女子テニス部のエースでもあったので色んなクラスに友達がいる。まさに引っ張りだこ。人気者ってすごい。

柚季の言うとおり、少し疲れてきた。

少し開けた場所にある椅子を借りる。

那智香は美術部だったのだが、来ている子も少なかった為、会話もすぐに終わってしまった。


ぼんやりとグラスのシャンパンを眺める。

(キラキラしてて、きれい…)

自分の視界から見るものよりも綺麗だと思った。

薄い黄色がかった景色にいくつもの星が打ち上がっていく。パーティー会場のシャンパン越しに見た部分だけに魔法がかかったように見えた。

(構図にしたら面白いかも…久しぶりに絵、描いてみようかな。匂いも気になると思うし、帰ったら画材買っても良いか聞こう)

柚季を探そうと椅子から離れ、キョロキョロと見渡す。

突然、わぁっと湧いたところがあって見てみると長身の男性に目が行った。


(えっ…)


やばっと思った時には遅くて。


(ひょっえぇ…)


目が合った。合ってしまった。


(え?なんで?いないって言ったじゃん…!いや、言って…無いな?!)


固まったまま、目をそらせなくて見つめてしまう…

(ふ…ふじしろ………)


相手もしばらく目を見開いた後、見つめ合っていたが、突然ギっと睨みつけられてしまった。


(あっ、あの顔は何度も見た…)


結構距離があったのだが、口の形で、分かった。



チッ



(舌打ち…しましたね?私、何もしてなくない?無理!怖い!!)


舌打ちのショックからか、やっと体が動く。

そのままスーと目を逸らし、那智香はもう居た堪れず、その場から逃げ出した。

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