第3話

猫達と一緒に夕ご飯も終え、ホットミルクで一息つこうとテーブルに着く私に、同居人が唐突に置いたのは高校から届いた葉書だった。

「同窓会?」

「そっ高校のやつ。行こうよ!」

「うーん、でも...」

「せっかくこんな可愛くなったんだから、皆に見せたくない?」

「いやいや、そんなに変わってなくない?」

「元からなっちんは可愛いけど、今もっと可愛いからね?」

「それは言いすぎじゃない?私よりゆずの方が綺麗だし、可愛いと思うんだけど?この前の新しいワンピースもめちゃくちゃ可愛かったし」

「えーありがと♡」

「あれずっと欲しいって言ってたもんね。」

「そうなの!!って話そらさないでよ!」

「うう...」

可愛いものに話をもっていって違う話題にしようとしたのに、ここまで付き合いが長いとそれもバレてしまった。

流石親友。

「ねー行こうよ?もしかして、私とは...いや?」

「違うよ!」

「じゃあ、なんで?」

「...だってさ、行きたい気持ちはあるよ?友達にも会いたいし、でも...」

「でも?」

「...ふっふじしろ、いたらこわい」

「あー、藤代かぁ...。なっち苦手だったもんね。」

「苦手とかじゃないよ...嫌われてたもん」

藤代ふじしろしゅん那智香なちか柚季ゆずきの高校時代の同級生。なぜ私がここまでビビるのか。

まあ、全部私のせいなんですけど...。



高校に入学したばかりの頃、いや、中学時代から私は笑いのツボが浅かった。

初めてのことばかりで慣れない中、緊張のせいでなんにでも笑ってしまう癖がついた。


クラスの中で、藤代は一番背が高く180cm以上あった。彼はガッチガチのスポーツマンで、大会の中で個人賞ももらっていたとかなんとか。

だが、スポーツはできるのだが、勉強はてんでダメで、学校の先生にはよくいじられていた。

オブラートに言えば、あほの子だった。

授業中、先生も分かっていないのに当てるから意地悪だ。頑張って答えようとしているが、考えながらも不機嫌になっていく表情が可愛かったと思う...。

押さえていたつもりだったのだが、私の笑う声は聞こえていたようで、クラスの中で一番小さかった私に馬鹿にされたことが気に食わなかったのだと思う。

自分でも最低だったなと反省している。

後悔した後にはもう、私がクラスの中でいじられる対象として目を付けられていた。イジメにまで発展はしなかったが、学校生活はまあまあ窮屈だった。

本当に馬鹿だった、あの時の私...。

目が合うだけで明らかに不機嫌な顔で舌打ちされ、通り道の邪魔になっただけで文句を言われ、ちょっとでも目立つ行動を取ると私に聞こえる声で悪口を言うのだ。

周りの男子は、小さかった私を球でも転がすかのようにからかった。

そこまでして楽しいか?と聞けたら聞きたい。


あれだけ殺意を向けられることが現代でもあるんだなぁと、今なら他人事のように思える。

元から男性が苦手だったが、本当に嫌いになりそうだった。


「でもあいつ、こういうの参加しなそうじゃない?」

「でもいたらどうする?!」

「いや、絶対来ないっしょ。いたら私が守ってあげるから。」

「...ほんと?」

「ほんと...あーもう可愛いなぁ、なっちんは!」

ぎゅーとゆずに抱きしめられる。自分よりも背が高いので、丸ごと包まれてしまうような感覚は本当に安心する。

「ふふ、もう分かったよ。絶対となりにいてよね。」

「やったぁ!せっかくだし、可愛いドレス一緒に選びに行かない?」

すっと離れたゆずはスマホに手を伸ばす。

「絶対似合うやつ選ぶから!ちょっと気になってるとこがあってね...ここどう?」

「えっいいかも...これゆず似合いそう」

「こっちは、なっち似合いそうじゃない」

「あっ、これもいい...」


ドレス選びをしてる間に、せっかく温めたホットミルクはすっかり冷めてしまった。

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