第9話

 空をはじめ、陸地にも、ドラゴン族達は街の外にひしめいている。

 そしてドラゴン族も愚かではない。かつての主こと『魔王』を倒した『勇者さま』が武装し現れた。それは降伏の意ではないとみなす。


 自分で自分に言い聞かせるように『勇者さま』は呟く。

「『ヒーラーさん』はきっとどこかで楽しく生きている。だって、今も、したかったことを出来ているのだから」

 そしてドラゴン族の群れへと前進していく。

 剣を振るい、魔法を駆使し、ドラゴン族らを倒していく。

「だって守りたいものを守れている」

 猛攻を盾とバリアヒールで防ぐ。

「──だよね?」

 熾烈な戦いの最中だとのに思うことは、あの人のこと。

「……『タンクさん』」

 どうしても『タンクさん』のことが頭から離れず忘れられない。

 食事に誘ってくれたこと、可愛いと言ってくれたこと、一緒にいて楽しかったこと。

 パーティーに加入して短い間だけど幸せだったこと。

 

 ──これは、彼を守る戦いなんだ。


 自身の体力も魔力もだいぶ削られてはいる怪我もしているだが、粗方ドラゴン族の雑魚は片付けた。残すは親玉──竜王──といったところか。


 真っ向勝負と言わんばかりに『勇者さま』は突っ込んでいく。

 竜王が放った火球が『勇者さま』の盾を破壊するがそれでも、互いに止まらない。

 だが、竜王の次なる攻撃が──。


「『ヒーラーさん』!!」


 当たり前かのように『タンクさん』は『ヒーラーさん』を庇った。

 それにより傷まみれの『タンクさん』。


「タンクってのはなぁ……! 一番大切な人を守れなきゃ意味ねえんだよ……ッ!!」

 

 その言葉を受け止め『ヒーラーさん』は竜王に真っ直ぐに立ち向かう。

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