第7話

 色んなメニューが美味しいからと贔屓にしている喫茶店にて。『ヒーラーさん』と『受付さん』はこの間と同じくお茶をする。

「楽しかったのね。良かったじゃないの。じゃあ恋愛相談に乗るわ!」

 先日の『タンクさん』とのお出かけの結果を報告する『ヒーラーさん』だが、楽しかったと言った反面に複雑な心境そうな面持ちをしていた。

「したかったことを本当に忘れてしまったんだなってな……」

 俯く『ヒーラーさん』に対し『受付さん』は、かける言葉がない。

 日常生活においてもよくあることだ、例えば仕事中に終わったらアレをしようコレをしようと思ってもいざ仕事が終わればやる気が出ない。恐らく『ヒーラーさん』であり『勇者さま』は長らく『魔王』と戦っていたので、一般人の仕事よりも酷く、忘れてしまう程なのだろう。だからと言って『受付さん』はそれを正直に言える程には無神経ではない。なので沈黙が生じてしまった。


「あ……。ごめん、愚痴っぽくなっちゃったね。きちんと思い出してみせるから!」

「それは──」

 無理に思い出さずに、新しくしたいことを探せばいい。『受付さん』はそう伝えようとした矢先。


 遠くから咆哮が聞こえた。


 それはドラゴン族のもの。

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