第5話
約束の、一緒のお食事の日のこと。『タンクさん』は待ち合わせ場所の広場で時間よりかなり早めに来て待っている。更に言えば今もまだ予定の時間から遠い。
──誘っといて緊張してるとか俺って……。
──でも相手は男だから友達感覚なら大丈夫だが……。
──女の子にしか見えねえし!
「……ダメだ」
俯きながら呟いたら「どうしたの?」と声がした。
顔を上げて視界に入ったのは『ヒーラーさん』の姿だった。
──『ヒーラーさん』は今日も可愛い。
「どうかした……?」
訝しげに問う『ヒーラーさん』にハッとする『タンクさん』。
「は、早いな!?」
「『タンクさん』の方がね」
それもそうだ。
「じゃあ行くか?」
「うん」
どことなく『ヒーラーさん』は冷静だった。
しかし『タンクさん』は緊張しているのだが。
お洒落なレストランにて。
どのようにお洒落かといえば可愛いと形容すべきだろう。普段なら絶対『タンクさん』は行かない店だが『ヒーラーさん』に似合うと思い『タンクさん』が選んだ。
「可愛いお店だね。『タンクさん』は好きなの? 可愛いの」
──違います……。いやでも好きか? 『ヒーラーさん』の可愛さは。
はたと気づき慌てて取り繕う。
「い、いや俺みたいな男だけだと入りにくいからさ。こういった店」
「それって……!」
驚く『ヒーラーさん』に対して『タンクさん』は言葉選びを失敗したかと思った──が。
「僕、上手く女装できてる?」
一瞬だけ呆気に取られてしまった『タンクさん』だったが、ここは思い切って素直に応える。
「女の子にしかみえないな。可愛いよ」
その言葉を聞いてすぐに『ヒーラーさん』は黙って俯いてしまった。だが『タンクさん』はそれで構わないとも思った。
何故なら一瞬でも『ヒーラーさん』の嬉しそうな表情が見ることができたのだから。
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