キノコは目立たないくらいにいてほしい

「キノッ!?な、なぜバレたキノっ!?」


「見た目かなぁ……」


 そして付け足すとしたらその変な語尾。バレたくないならせめてノコにしろよ。そうすれば乃子だけにっ☆とかとぼけられる余地がまだあるだろうに。いや普通に見た目がグロすぎて無理だが。


「え、というかそれどうなってんの。乃子生きてんの」


「いや、肉体は動かすために頑張って生かしてるキノけど、脳は完全に私が掌握したキノ!キーノキノキノッ!今さらながら私の恐ろしさに気付いたキノか!さあ、命乞いを────」


「ちょうどよかった。俺植物になりたかったんだよ」


 キノキノ笑いながら変な液体をばらまいていたキノコ星人の動きが止まる。穴という穴からキノコが出てるせいか表情は見えにくいが、明らかに困惑していた。思ったより話が通じそうだな。少し気が楽になったおかげか、思っていたことがするする出てくる。


「なんかどっからか侵入して体内にキノコ生やすとかどうせそこらへんだろ。んで、もう充分に胞子かなんかが俺の体内に充満してるんだろ?じゃあもうやればいいじゃん。あ、でもあんまキモイ見た目になりたくないからそこらへんは配慮してくれよ。なんならもうキノコでいいから。一本のでっかいキノコでいいから」


「────え?いや、協力的なのはいいことキノだけど、もうちょっとこう、未知のコズミックホラーに突如巻き込まれて混乱する現地住民のリアクションしてほしかったキノ……」


「待てよ、キノコって植物だっけ」


「えぇ……地球人ってこんなのばっかキノ……?滅ぼしがいがないキノねぇ……。ちなみにキノコは菌類だから植物じゃないキノ」


 そこは教えてくれるのかよ。なんか憎めない宇宙人だ。


「じゃあ嫌だ。キノコとかなんかじめじめしたやつだと思われそうだろ」


「キノコの生態とお前たち知性生物の性格を一緒にするなキノ!」


「それに俺はキノコとか嫌いだ。おいしくない」


「キノコ星人の前でよくそこまでキノコのことをコケにできるキノね!?命が惜しくないキノか!?」


 あ、本当にキノコ星人なんだ。見た目がキノコっぽいだけで実はプチャラマイオス星人とかだと思ってた。


「命よりプライドが優先の欠陥生物なんだよ、男ってやつは……」


「お、おぉ……なんかそれっぽいキノ……」


 感心するように俺の顔をまじまじと見るキノコ星人。……もしかしなくてもこいつ、馬鹿なんじゃないか?ワンチャン懐柔できるか?今思うとなんか騙されやすそうな光沢してるし。


 つやつや~って感じの毒々しい赤い表面のキノコ。うん、明らかに自分ヤバい奴ですよ~って感じの危険色だ。


 うん、いったん帰ってもらおう。キノコって植物じゃないみたいだし。キノコにされちゃったら「やーい!お前んちの息子、比較的大型の(しばしば突起した)菌類が、胞子整形のために作り出す複雑な構造(子実体)、あるいは担子器果そのもの(ソースはWikipedia)!」とか父さんが近所にいじめられてしまう。


 それっぽく誘導すればなんか勝手に納得して帰りそうだし、この子。仕方ない、先ほどスリーチャン女子にフラれる程度の実力を持った俺の華麗な交渉術を、宇宙に響かせてやります、か……。


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キノコ襲来!人類終了のお知らせ!? @Wasshii319

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