おもひでぱらぱら

白川津 中々

◾️

二度と食べられない味に思いを馳せる昼下がりである。


小学生の頃、土曜日。半ドンで帰ってくると、それを見越したように母親が作ってくれたできたての焼き飯が卓に並んでいた。材料は玉子とネギと細切れのベーコン。あとは、使えそうなものを適当。粗雑は味わいは子供ながらに手抜きだなと感じた反面、安心感と温かさが落とし込まれていたような気がする。決して美味いというわけではなかったが、思い出の料理。二度と口にできないあのべっしょり具合。もう一度、食べてみたいものだ。


「ご飯できたよー」


「あいよー」


休日の昼食。卓に置かれたのは母の得意料理となったチャーハン。油とラードを大量に使い大火力でぱらぱらに仕上げた、中華料理店顔負けの逸品である。


「……お母さんさぁ」


「なに?」


「昔の焼き飯、作れない?」


「前にも言ったでしょ。ちゃんとしたチャーハン作れるようになると、家庭の焼き飯は作れないの」


「……」


「これも何回も言ってるけど、あんたが美味しくないなんて言うからわざわざチャイナレストランで修行したんだからね。今更あの味がよかったなんて言われても困るよ」


「……」


母親のもっともな正論を聞きながらチャーハンを食う。美味い。しかし、これは卓越した料理であって家庭の味ではない。今になって分かるあの純朴な味わい。百点中六十五から五十点程度の、あの焼き飯はもう、食べられないのだ。昼時の至福は、失って初めてわかるものだった。


「美味いんだけど、違うんだよなぁ……」


ハイクオリティなチャーハンを食べながら俺は母の焼き飯を夢見る。帰らぬあの頃。幼い記憶力。おもひでぱらぱら。

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