一話  周りに合わす日々

高校2年生になったわたし、月下香織は自分の主張をはっきりするのが苦手だ。

そのため、一年生の頃から周りにあわせて生活していた。

二年生になった今、クラスのメンバーも変わり、一層周りに合わせる日々が続いている。

そんなある日、授業の中で班でそれぞれクラスの前でプレゼンをする、という授業があった。

もちろん、班分けは席順で六人一班だった。

最初に役割分担が行われ、自分の意見を言えるわけもなく、押し付けられるような形で、調べ物担当になった。

プレゼンの内容を調べてまとめる。

普通にめんどくさいものだった。

その日は何をプレゼンするのか、と言う話し合いをして終わった。

また調べ物担当は、次の時間までにプレゼンする内容について調べてまとめておくように言われた。

次の授業は、明後日。

それまでに調べないといけない。

そう思うと少し焦る気持ちが出てきた。

その日の昼休み、とりあえず図書室に行ってみることにした。

昼休みだったが、そこまで人はいなかった。

わたしと一緒で、調べ物に来た人が数人。

多分普通に本が好きな人が数人と言う具合だ。

入り口から一番遠い部屋の角のところに、わたしの求めている本があった。

何冊か見繕って、借りる本を決めた。

その数冊の本を持って、カウンターへと向かった。

そこには、少し背の高い男の人が座って本を読んでいた。

図書委員とかかな。

そう思いながらカウンターの机の上に本を置き、声をかけた。

「すみません。本借りたいんですけど…。」

控えめな感じで声をかけた。

彼の目線が上から下へいき、持っていたしおりを挟み本を閉じた。

それまで、顔を下に向けていた彼が顔を上げた。

「貸し出しですね。生徒証持ってますか?」

そう言われた初めて貸し出しに生徒証がいることを知った。

「あっ…えっと…。いるって知らなくて…持ってないです…。」

そう言いながら、借りようとしていた本を持とうとした。

「あっ、ちょっと待って!それ授業に使うやつでしょ?

僕のやつ代わりに使っていいいよ。」

多分借りようとしていた本を見て察してくれたのだろう。

「いや…でも迷惑かけちゃうし…」

断ろうとした。

「大丈夫、大丈夫!バレなきゃ問題ないし。

ちゃんと期限までに返してくれればいいから。

そんなことより授業に間に合わなくなる方が困るでしょ?」

借りようとしていた本を読み込みながら言う。

もう断っても無駄だと悟り、とりあえずお礼を言った。

「ありがとうございます。

また何かお返しさせて下さい。」

借りた本を抱えながら、彼に言った。

「うん。あっ、今度借りに来るときは、ちゃんと生徒証持ってきて下さいねー!」

わたしが部屋を出る時には読んでいた本を開いていた。

そういえば名前も学年も聞いていなかった。

返しに行く時にもいたらいいな。

そう思いながら自分の教室へと戻った。



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