第13話 天太刀の初陣
飛び出して行った、弥だが、禍忌探しに、茂みを掻き分けながら進んでいた。(月影は、そこいらの太刀とは別物だ、振ってみて解かったが、「太刀」と「鉈」と「斧」が混ざったような太刀だ……早く次の出立までには、感覚を覚えたい)
とはいえ、塩之祇郷の周りは、隠密衆や、郷の武人衆で禍忌は駆逐されているので、そう易々とは現れない……(まぁ郷が襲われないことは良いことなんだ……でも!今は現れてほしい!)とりあえずもっと奥を目指して進む。すると、
(…………‼禍忌の気配がする)距離で七間「13m」ほど、だが、ここに来たのは「狩り」のためではない!気色を隠す必要はない!
弥は目一杯、息を吸い込み…………
「かかって来いや‼‼‼‼こらあああぁぁぁあ‼‼‼‼」
その叫び声に、弥が心配でついてきた、雪乃・マサト・小迦華は仰天した。
「……ンな、何してんの弥……」
「よほど『月影』を試したかったんでしょうね……へへ」
「ぁらあら……流石ねぇ、ふふ……」
当然ながら、ぐおおおおおお‼‼‼‼と雄叫びを上げながら、禍忌が弥を目指して驀進してくる、弥の手前まで来て禍忌が立ち上がった、十尺(3m)はある、熊の禍忌だ。凄い瘴気を放っている。そして弥の顔面目掛けて、図太い丸太様な腕で、鋭い爪を振り下ろす。……が、そこに弥はいない。禍忌が慌てた様に四方を見渡す……が、弥は、重すぎる天太刀を携え、真上に跳んでいた。弥は、宙で『月影』を両手で握りしめ、振りかぶり、禍忌の脳天めがけ……「剣技」を繰り出す……
「……獣裂之太刀・鬼嚙み……」
『天太刀・月影』を思いきり振り下ろした‼禍忌の頭部を真っ二つに割り、禍忌は声も上げず絶命した。
(うんうん……なるほど‼扱いは、こんな感じか!)
すると、強い瘴気と濃い血の匂いに誘われたのか、別の禍忌が向かって来た、足音から猪の禍忌であろう。
(へっ……丁度良かった、切先の無ぇ『月影』で試したい技が、あるんだよ‼‼)
弥は、『月影』を抜き右手に持ち、右足を引き、
「ぐぎゃあぁああ‼」その刹那、弥は、左足に重心を乗せ「突き」を放った。
「……
禍忌の眉間(印堂)に、月影が突き刺さり貫通した、禍忌は即、絶命。
「凄いじゃない!」
「兄さま……、禍忌二体を……、瞬殺って……」
「お見事でしたわ!」
「おう!かなり月影と相性良いぞ‼」
「…………火曜の天具だから、当たり前でしょ……、もぅ」
……さて腕試しは、終わったが、デカイ屠体が二体もいる
「なあ、俺が今から血抜きするからよ、三人で郷人何人か連れて来てくれ!」
「だったら私が残って、あっちの禍忌を血抜きしてくるわよ、三人も要らないでしょ?」
「それもそうですね。血抜きは早い方が賢明ですね。行きましょう、小迦華」
「はぃな、急ぎましょう」
二人は禍忌二体の血抜きに取り掛かった、出来るだけ早く終わらせる。
「てかさぁ……、他の郡とか郷って、退治した禍忌をどうしてるんだろな?うちの郷には、婆さんの『神の御塩』があるから、有難く美味しく食ってるけど」
「ん~~~分かんないけど、前に小迦華が(美味しいお肉ですわね……ぇえ”禍忌お肉⁉初めて食しましたわ……)って、反応してたから、他じゃ食べないのかもね」
なんとか血抜き作業は一段落ついた二人だった。野原に寝そべる、二人とも両手は血で真っ赤だ。
「なんか塩之祇郷って恵まれてるよな……」
「そうね……」
「なぁ……」
「なに……?」
「口づけさせてくれ……」
「ぅん……良いよ……ん⁉んんん⁉」
雪乃は話の脈絡が分からな過ぎて絶句した。
「ぃやあぁ郷のみんなの前で『
(それは、弥が、あんた一人でしたことでしょ‼‼‼‼)
「なんていうか、形ある誓い~、をくれ」
(そしてまた、身勝手なお願いをしてくる~~……)
雪乃は呆れた、あるいは、あきらめたのか
「……はいはい、よく分かんないけど、わかったわ」
お互い禍忌の血抜きをして、手が汚れているので、抱きしめれないから、口先だけ合わせた……
「……なんか……風情ないわね……ふふ……」
「……そうか?俺は、いま、すっごい幸せだぞ、へへ」
弥は、赤い顔をしながら、はにかんだ。それを見て雪乃も連られて、頬が紅潮した。
「兄さま~~~、お連れしました~」
マサトと小迦華が郷の衆から、体躯の良い六人を連れてきた。
「……?、二人とも、顔が赤いですよ?」
「ひ、日差しが強かったからかな?」
(?……ここ森の中なんだけど……まぁ良いか)
「若殿が二体の禍忌を、それぞれ一撃で退治したと聞いて」
「ぉぉお!禍忌をそれぞれ脳天を一刀か……見事。さすが若殿と天太刀の御業じゃ!」
「良いねぇ、禍忌の血抜きも完璧だ!」
そして塩之祇郷・武人衆別当、つまり武人衆の頭の『煌太』が跪いて、
「若殿、雪乃様、水を、たっぷり汲んできましたよ!あと婆さんの「御塩」も持って来てます!二人とも両手に憑いた瘴気を、清めちゃってくだせい!」
「ぅっわ‼ありがとう、助かった‼」
「煌太、ありがとうね」
「当然のことですよ、若殿、雪乃様」
それから皆で禍忌二体を郷まで運び終えた。郷人は、今まで見たこともない、大物に感動していた。そして、そのあとの処理は別の衆に引き継ぐ。昔からの伝統だ。
禍忌が、それぞれに、すっぽり入る大穴を二つ用意し、(マサトが、一瞬で作った)屠体を穴の中に入れ、御海で満たす、そこに塩婆の「神の御塩」を溶け込ませ、一晩置く、次の日になると、瘴気と臭み、固さが完全に無くなる。塩婆の塩が「御国中」で重宝されるのも、この「よろずの塩」だからである。
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