第12話 襲名と宴の次の日

…………日差しが、妙に眩しい、…………(ん……どこだここ?……ぁあ俺んちだ……)むくりと、弥は起き上がった。縁側に立つと、もう昼が近く、お天道様が真上にきていた。(途中から記憶ねえし、どうやって帰って来たんだ……?)

 表を見渡すと本当に昨日宴あったのか疑いたいほど、広場は、元通りに綺麗になっている。(…………なんか、忘れているような…………ン………………‼‼⁉⁉)

「て、天太刀・月影⁉」(……ど、どこにいった……⁉う 、噓……) っと、己の寝床を見ると、枕元の床に寝かされていた。弥は、ふか~~~く溜息をついた……とりあえず昨夜のお礼も兼ねた、挨拶廻りをしよう。

 家には、誰も居ない……塩之祇郷では、祭りや、宴の次の日は、大体休むんだが……とりあえず外に出るか。

 弥は、腰に「月影」と「陽炎」を差して広場へ向かった。すると大歓声が上がった!

「ぃよ~~っ!やっと起きたか寝坊助ははは」

「若殿、昨日はホントに良かったぜ!夫婦めおとの誓い」

(?????夫婦の誓い??)よく分からんかったが、

「へへへ、みんな……昨日は、ありがとうな」

 どうやら、みんな、良い天気だから、外で飯を食ってるらしい。「ぐぅぅうう」、

腹が鳴った……周りのみんなが、旨そうに、おにぎりと、味噌汁をすする姿を見て、弥は、我慢できなかった。すると近くの丘から、

「兄さま~~こっちです~~‼‼」

マサト・雪乃・小迦華・灼弥・輝弥・親族たちがいたので、駆けつける。スゴイ数の握り飯と、漬物、昨日の宴の余りの肴、味噌汁が焚火で温めてある。

弥は、姿勢を正しく座り。真剣な眼差しで、

「昨日は心より感謝申し上げます」

「あんた、本当に死んだように寝てたわよ、あはは」

弥は、握り飯を両手に持ち、

「いや、すみませんでした。スゴイ楽しかったの覚えてるけど、へへ、途中から記憶なくなった……」

「…………はぁ、兄さま、五杯目の大杯飲み干したあと、『俺は御国一の剣聖になぁる‼‼‼‼そして雪乃と夫婦になる!なははは!』って、声高らかに宣言して、そのまま倒れました……心配しましたよ、本当に……重い天太刀も離そうとしないから、大男六人で運んだんですからね!」

「……へぇええ……そうだったんだぁ……ごめんよ……」

(夫婦の誓いって、これのことか……)変な汗が出てきた。ちらりと雪乃に目を遣ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。

(す、すまん!雪乃)……しかし思えば、ここには、雪乃の家族がいた……

「弥…………」

雪乃の父から話かけてきた。

「……は、はい……」

「弥がめとってくれて、夫婦めおとになってくれるなら、安心だ!雪乃を頼んだよ。はは」

弥は安堵し過ぎて、腰が抜けた……(よ……良かった……)

 そして、皆と、ワイワイ昼飯を楽しみ、それぞれに、分かれた。弥は、雪乃、マサト、小迦華、灼弥・輝弥と六人で歓談していた。

「そういや、まだ『月影』の『刀身』見てなかったな」

そして、いざ抜こうとすると、普通の打刀なら、「シャリン」と軽やかな音を鳴らし、抜けるのだが、「月影」は、違った。すんなり抜けるが、抜刀の音が「ずしゃぁあ」と響く……天太刀のくせに、気色悪い……あらためて太刀を見ると……

「なんだ、この太刀?切先がない……」

「刃紋は、素晴らしく綺麗です……ですが、刃は薄くないですね……切れ味は分かりませんが、刃毀れ《はこぼれ》とか、無縁そう……」

「おい!峰の厚み見てみろよ、半寸、つまり五分(1.5cm)もあるぞ!そりゃ重いわな!灼弥持ってみろ!」

「はい!兄様」

灼弥は太刀の柄を、両手でしっかり持ち力を込めた。

「ぅうんんがああぁぁ」

腰の辺りまでは上がったが、もう限界のようだ。

「とんでもない太刀です……これは……」

輝弥が、私もと言ってきたので、持たせたが、一寸しか上げれなかった。

すると、

「弥にいいぃぃぃ‼‼‼‼」

元気なのが来た。村正が活気よく近寄ってきた。

「ねぇ、おいらにも天太刀見せてよ」

さすが、鍛冶師見習い、瞳を輝かせている。

「でも、お前、宴の前に月影を奉納する準備見たんじゃないのか?」

「ん~~ん、神聖な儀式の仕事だからって、じっちゃんと、とっさんしか、工房に入っちゃ駄目だったんだ」

「なるほどな……ほれ、重いから、気を付けて持てよ、へ」

「へえ~、面白い型してるね……おいらも工房で何百本て見てきたけど、此の御剣は、初めて見るよ。……んんん~重い……弥兄……これ戦場いくさばで、振るえるの?」

「そんな重いか……?」

すると弥は、ひょいと、片手で持ち上げた……。さすがに六人とも唖然とした……

「あ……兄さま……そんな軽々と……えぇ⁉」

「てか、この天太刀この重さ丁度良いわ」

すると弥は、片手で月影を、ブンブン・囂々と振りまわしたあと、剣技を繰り出した。(じいちゃんに伝授された剣技、『月影』だと、思い通りに扱える……じいちゃん、もしかして、いずれ俺が『月影』を賜るのを見越して……!)

弥は、急にうずうずしてきた。(た……試したい……!)

「ちょっと森のなか、見廻りしてくるわ‼」

弥は森へ向かって驀進ばくしんしていった……

「って‼弥‼」

「ぇえ~~兄さま……」

「……ぁらあ~……」

灼弥・輝弥「案の定…………兄様」




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