第11話 塩之祇郷の宴

さて、ここから始まるは「塩之祇郷」の宴。基本的に、塩之祇郷の衆は「風呂好き・酒好き・宴好き」である……結局、騒ぐのが大好きなのだ……が、小迦華は、雪乃と、婆たちの質問責めにあっている……が、「天女様みたいだったよう」「小さった雪乃様がご立派になられて……」「雪乃様、御襲名おめでとうございます」っと、もてはやされる一方、弥は良い感じに酔った男衆に囲われていた。というか、揉みくちゃに、されていた……。しかし負けず嫌いで宴好きの弥、俺がこの郷を守ってやるからなあ‼‼‼‼高らかに声を上げ、大杯で酒を一気飲みしていた。

マサトは、弥と雪乃の親族と、静かに飲んでいた。

「マサト殿、うちらの孫二人は迷惑は掛けてないですかな?」

「いやいや、兄さま、姉さまには助けてもらってばかりです。兄さまは焔の様に情熱滾たぎるお人ですし、姉さまは優しく照らす月の如く、慈しみのある方です」

「それは良かったですじゃ。マサト殿に、折り入って、お願いがあるのじゃが……」「はい、ワタクシに出来ることなら、何なりとお申し付けください」

「……貴方様からは、懐かしい気色を感じられますのぅ……あのお優しかった御両所お二人の…………」

「…………え…………?」

親族たちが皆、喜びの涙を流し、マサトに平伏していた。宴に興じている者は、こちらに気づいていない。

「…………真仁様、よくぞ、よくぞ生き延びてくださった!どうか今夜生まれた、雛鳥のような、か弱き二人の七曜を、お導きくだされ…………!」

「お生まれになって、すぐにみまかられたと知らされた、東宮様が、こんなにも大きく御成りあそばして…………」

その言葉に応じるように、真仁が静かに聖眼を開く……

「ぉ…………おお、聖皇…………御尊顔を拝すること叶い、恐悦至極に存じます」

「皆よ、案ずるな。そのうちに朕が即位し、この世に静謐せいひつをもたらそうぞ。そなた達、弥を屈強な武人に、雪乃を慈悲深いかんなぎに育てたこと感謝する。それとあの二人は、雛鳥ではない、力強き「狗鷲いぬわし」じゃ」

「もったいなき御言葉に御座います」

…………そのあと、マサトに戻り、母の中宮・澪子との思い出を皆に聞かせてあげた。皆、嬉しそうに、懐かしがりながら聴いていた。

          『皇居・東宮御所』

(…………?……波を感じる……あやつ、聖眼を開いておったな……)

(この前の激情に荒れた波ではないな……凪いでおる……)

(…………余は、早うそなたに会ってみたいの…………ふふ」

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